52.モノグルコシルヘスペリジン→血圧低下(さくらフォレスト事件(2))

さくらフォレスト事件

23年6月30日措置命令:さくらフォレスト社の機能性表示食品の広告

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対象商品

<きなり極>

<きなり匠>

消費者庁の照会

モノグルコシルヘスペリジンの有する血圧低下に係る機能の科学的根拠としているレビューにおいて対象とした論文は全て、減塩しょうゆタイプ調味料を試験食品とした試験結果であるが、減塩とモノグルコシルヘスペリジンとの相加・相乗効果も想定されうる。減塩しょうゆへの置き換えを伴わない場合にも、同様の結果が得られるといえるか。

原料メーカーの回答

しかしながら、システマティックレビュー採用論文に記載のヒト試験を実施したところ、プラセボに用いた減塩しょうゆを正常高値血圧者に12週間継続摂取させても血圧低下は観察されませんでした1)。この結果は、本試験で用いた減塩しょうゆが血圧低下効果を発揮するほどの減塩量ではないことを示しています。事実、本試験の減塩しょうゆは、ナトリウム量が382mg/10ml、食塩相当量が1.0g/10mlであり1)、食品表示法で定められている減塩しょうゆの基準(ナトリウム量が3,550mg/100ml以下、食塩相当量が9g/100ml以下)より高値です。

 

これに対し、同じ減塩しょうゆにモノグルコシルヘスペリジンを配合して正常高値血圧者に12週問継続摂取させたところ、摂取前と比較して血圧の有意な低下が観察され、かつ、プラセボの減塩しょうゆ摂取群と比較しても有意な血圧低下が観察されました1)。減塩しょうゆの効果が認められない中で、モノグルコシルヘスペリジン配合による血圧低下効果が観察されましたので、この効果は減塩しょうゆとモノグルコシルヘスペリジンが相加・相乗的に働いた結果ではなく、モノグルコシルヘスペリジン単独の作用によってもたらされたものと判断されます。

 

また、プラセボに用いた減塩しょうゆは、前述したように食塩相当量が1.0g/10ml(通常の濃い口しょうゆの50%)になるように設計しています1)。被験者は、この減塩しょうゆ10mlを1日の料理の中で通常の濃い口しょうゆと置き換えて摂取しました1)。通常の濃い口しょうゆの食塩相当量を2.0g/10mlとすると、10mlを減塩しょうゆに置き換えることで1日あたり食塩相当量1.0gの減塩になると推定されます。この程度の減塩量では、血圧に影饗はないことが知られています4)。

 

従って、当該試験は、プラセボに減塩しょうゆを用いているものの、血圧低下効果に対する減塩による影響はなく、モノグルコシルヘスペリジン単独の血圧低下効果を科学的に評価するうえで妥当であると考えます。さらに、システマティックレビュー採用論文に記載のヒト試験において、モノグルコシルヘスペリジンを17.9mg/日の用量で摂取するより、35mg/日の用量で摂取する方が血圧低下効果は大きくなることも確認しています1,5)。このことから、モノグルコシルヘスペリジンの血圧低下効果には用量依存性があると言えます。用量依存性は薬効の基本であり、それ故、モノグルコシルヘスペリジンの血圧低下効果は、本成分単独の作用であると判断するのが合理的だと考えます。

 

なお、上記試験方法及び当該試験によって得られた試験結果の合理性について、専門家へのアリング、確認を行った結果、薬理学上合理的な内容である旨の意見書を頂戴しております。
以上の知見および試験結果より、モノグルコシルヘスペリジンは、単独で血圧低下効果を発揮すると結論でき、減塩しょうゆへの置き換えを伴わなくてもその効果を発揮すると考えます。

 

加えて、モノグルコシルヘスペリジンは、経口摂取すると小腸の消化酵素aーグルコシダーゼによってヘスペリジンに分解されて吸収されること6)、その結果として、ヘスペリジンが本来持つ中性脂肪低下効果7)や血流改善効果8)などの生理作用をヒトにおいて発揮することが証明されています。すなわち、モノグルコシルヘスペリジンの作用本体はヘスペリジンです。最近になり、ヘスペリジンは、単独で血圧低下効果を発揮することが報告されました9)。この報告では、ヘスペリジンをカプセルに入れて血圧が高値の2型糖尿病患者に6週間経口摂取させており、プラセボ(でん粉を入れたカプセル)摂取群と比較してヘスペリジン摂取群で有意な血圧低下が観察されました9)。この知見もモノグルコシルヘスペリジンが単独で血圧低下効果を発揮することを強く支持しています。

モノグルコシルヘスペリジン単体での臨床試験がない点がウィークポイントです。