はじめに
機能性表示食品を取得するには、正しい手順に基づいた届出が必要です。
このコンテンツでは、そんな機能性表示食品の届出の流れについてわかりやすく解説します。
機能性表示食品の企画や届出担当者の方は、ぜひご覧ください。
※図はクリックすると大きくなります。
機能性表示食品の届出先
届出の流れを知る前に、まずは届出先について知っておきましょう。
機能性表示食品の届出先は消費者庁です。
「特定保健用食品(トクホ)」のような許認可制とは異なり、消費者庁長官による個別審査を受ける必要はなく、形式審査をして、問題がなければ受理されます。
パッケージにも必ず「本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。
特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」という注釈文言が入ります。
ただし、実際はかなり厳しい書類の届出と審査が課され、細かくチェックの上、基準に合致しないと、差し戻されます。
また、一度受理されたとしても、後日、調査が入り、不備を指摘されれば、書類の追加提出を求められる場合もあります。
それでも、先輩格の制度であるトクホが要する期間(1〜2年)や費用(数億円)に比べれば、だいぶ負担も軽く(数ヶ月〜、数百万円~1千万円程度)、対象商品も、うたえる機能性の表現も幅広いです。
届出先である消費者庁の考え方を知った上で、うまく対応できれば、コストパフォーマンスの良い制度と言えます。
機能性表示食品の届出受理要件
届出の流れの前に、もう一つ、大前提をおさえておきましょう。
そもそも「機能性表示食品」は、消費者の正しい商品選択のためにできた制度。
事業者の責任で安全性の確保と科学的根拠を示すことで、商品パッケージに健康の維持や増進に役立つ機能性を表示することができます。
したがって、機能性表示食品として受理されるためには、下記要件を満たす必要があります。
- 安全性の根拠
- 生産・製造及び品質の管理
- 健康被害の情報収集体制
- 機能性の根拠
- 表示の内容(パッケージデザイン)
- 作用機序
機能性表示食品の届出の流れ
届出前の準備
商品(ヘルスクレーム)企画
商品企画の大前提となる、ヘルスクレーム(機能性の表示文言)と機能性関与成分を決めます。
ユーザーID取得
届出のやり取りは、すべて消費者庁の「機能性表示食品制度届出データベース」を通じて行います。
まずは「機能性表示食品制度届出データベース」にアクセスし、「食品関連事業者に関する基本情報届出(新規)」に必要事項を入力の上、出力した用紙を郵送すると、届出に必要なユーザーIDが取得できます。
エビデンスづくり
研究レビューとは、SR (Systematic Review)・総合的文献調査とも言い、機能性関与成分に関する臨床試験の論文・文献をもれなく調査し、体系的に評価をまとめたものです。
具体的には、下記の流れで作成します。
●論文検索
商品企画の前提となる、ヘルスクレーム(機能性の表示文言)と機能性関与成分を条件に、エビデンスとなる論文を検索します。
検索は、海外の論文データベース( PubMed、The Cochrane Library等)、国内のデータベースJdreamⅢ、医中誌WEB等)を最低1つずつ使います。
●論文選定
抽出した論文のアブストラクト(要約部分)を確認しながら、機能性表示食品の制度に適合しない論文を除外します。
たとえば、下記に該当する試験は、機能性表示食品の対象外となります。
- アルコールを含む飲料、塩分・糖分・脂質等の過剰摂取につながる食品
- 「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に指定された成分を含んでいる
- 特別用途食品栄養機能食品食事摂取基準に基準が策定されている栄養素を含んでいる
- 疾病の罹患者を対象としている
- 未成年者を対象としている
- 妊産婦(妊娠を計画している方を含む)および授乳婦を対象としている
●研究レビュー作成
残った個別の論文をまとめます。具体的には、論文ごとの試験デザインや、バイアス(問題点)、測定項目の試験結果を一覧化し、届出する商品のヘルスクレームが言える科学的根拠・妥当性を説明します。
臨床試験とは、RCT (Randomized Clinical Trialの)・ダブルブラインド比較試験・ランダム化プラセボ対照試験・ 無作為化対照試験とも言います。 被験者を、本品(最終製品)を摂取するグループと偽物(プラセボ)を摂取するグループにランダムに分け、そのことを知らせない状態(ブラインド)で試験する、誤った結論を導きやすい要素を排除する方法です。
●倫理審査
臨床試験は、臨床研究審査委員会(任意の組織)に計画書『同意取得用の説明書(インフォームドコンセント)』や被験物質の『概要書(安全と分かる資料)』や提出し、その認可・監視の下で実施することが求められています。
薬事法ドットコムグループでは「一般財団法人アカデミアコンソーシアム」のIRBが、2019年5月に臨床研究法に基づく「認定臨床研究審査委員会」と認定されました。みなさまが安心して臨床試験を依頼いただける体制が整っています。
●UMIN登録
UMIN(University Hospital Medical Information Network)とは、臨床試験情報のデータベースです。
●臨床試験の実施
被験者を募集した上で、届出する商品のヘルスクレームが言える科学的根拠となる臨床試験を行います。グループの施設をはじめ、大学研究室やクリニックなどの試験施設も手配いたします。
●論文作成
試験結果について統計処理を行い、有意差検定に基づいて、届出商品の有効性を論文にまとめます。
●論文投稿
機能性表示食品制度では、臨床試験の論文を査読付き雑誌(「医学と薬学」「BBRC」等)に掲載する必要があります。
査読付き雑誌とは審査を通らなければ掲載できない雑誌で、ヘルスクレームの有効性を、客観的な評価で担保することになります。
また、ご要望に応じ学会報告も行います。
エビデンス(研究レビュー・臨床試験)の作成
臨床試験の企画~実施まで、一括して委託できます!
届出書類の作成
安全性の根拠
下記を安全性の根拠とします。
- 喫食実績による食経験の評価
- 既存情報による食経験の評価
- 既存情報による安全性試験結果の評価
- 安全性試験の実施による安全性の評価
喫食実績がない場合は、製品か関与成分の食経験、または安全性試験の情報を下記データベースで調べます。
生産・製造及び品質の管理
工場ごとの製造・品質管理の方法(GMP、HACCP等の準拠)、関与成分名とその分析方法、その他製品規格書、機能性関与成分の分析試験成績書、定性定量試験結果をまとめた書類です。
健康被害の情報収集体制
健康被害発生時の窓口・組織図と健康被害発生時の行政への報告フローチャートをまとめた書類です。
機能性の根拠
表示しようとする機能性の研究レビュー(SR)・臨床試験(RCT)論文をエビデンスとしてまとめた書類です。
機能性表示食品受理の根幹をなす書類だけに、求められる書類は多岐に渡ります。
・機能性の科学的根拠に関する点検表
・特定保健用食品とは異なる臨床試験方法とした合理的理由に関する説明資料
・表示しようとする機能性の科学的根拠に関する補足説明資料
・表示しようとする機能性に関する説明資料(研究レビュー)
・データベース検索結果
・文献検索フローチャート
・採用文献リスト
・除外文献
・未報告研究リスト
・参考文献リスト
・各論文の質評価シート(臨床試験)
・各論文の質評価シート(観察研究)
・エビデンス総体の質評価シート
・サマリーシート(定性的研究レビュー)
・サマリーシート(メタアナリシス)
・研究レビューの結果と表示しようとする機能性の関連性に関する評価シート
表示の内容(パッケージデザイン)
機能性表示食品で表示しようとする内容が記載されたパッケージの表示見本です。
表示する文章だけでなく、デザイン・イラスト・形状も届出対象となります。
パッケージ表
- 機能性表示食品である旨
- 届出番号
- 消費者庁長官に届け出た機能性
パッケージ裏
- 1日当たりの摂取目安量
- 摂取方法
- 注意事項
- 医薬品ではない旨
- 疾病の罹患者、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している方を含む)および授乳婦を対象に開発された食品ではない旨
- 「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、 食事のバランスを。」という食事のバランスに関する記述
- 事業者の連絡先
- 1日当たりの摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量
作用機序
関与成分について、どのようなメカニズムで機能性を発揮するのかまとめた資料です。
「機能性はあることは分かっているが、なぜ機能性があるのか分からない」というのは、機能性表示食品として認められないためです。
機能性のエビデンスで認められてないin vitro(試験管での試験)、in vivo(生物での試験)の論文でも、査読付論文でなくても問題ないですが、エビデンス自体の提示は必要です。
届出
消費者庁に届出書類を提出します。
下記観点で、書類に不備があれば担当官から届出の差し戻しがあり、修正の上、再提出します。
提出書類のチェック項目
- 安全性の根拠
- 生産・製造及び品質の管理
- 健康被害の情報収集体制
- 機能性の根拠
- 表示の内容(パッケージデザイン)
- 作用機序
このフェーズで、何度も差戻されて届出が停滞するケースも少なくありません。
薬事法ドットコムでは、多数の機能性表示食品の届出に関与しているため日々の差戻しを通し、運用の変化をいち早く察知できます。
当社独自のネットワークからの情報収集を加え、適切な対応をご提案しますので、お困りの場合は、ぜひご相談ください。
届出受理
届出書類に問題がなければ、消費者庁は受理番号を交付し、その届出を消費者庁HPに公開します。
その後、60日間待ち、特に問題が出なければ販売をスタートできます(「販売前届出制度」と言われています)。
受理までの期間
最低9〜12ヶ月くらいを見ておくのが一般的です。
最も時間を要するのは、エビデンスづくりですが、中でも臨床試験(RCT)は、最大12週間かかる上、論文を査読付き雑誌に掲載する必要があり、合わせて半年くらいを想定した方が良いでしょう。
前述した受理後60日の待機時間を含めてスムーズに進んだとしても、1年近く(場合によってはそれ以上)要するプロジェクトなのです。