機能性表示水面下情報~202号~ 大倉社のオリーブ由来ヒドロキシチロソールはOK?

弁護士出身の実業家・林田です。

 

今日はケーススタディとして、大倉工業社の

I418「国産オリーブ葉ゼリー」を取り上げます

(>表示見本。1日量20g)。

届出表示は、「本品にはオリーブ由来ヒドロキ

シチロソールが含まれます。オリーブ由来ヒド

ロキシチロソールには、抗酸化作用により血中

LDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑制さ

せる機能が報告されています」。

措置命令の対象となったさくらフォレスト社の

きなり匠と同じです(>表示見本。1日量5.25mg)。

なぜ、消費者庁は後者をNGとしておきながら

前者を認めたのでしょうか。

まず、さくらフォレスト社の採用文献は次の3

報。

#1 Vazquez-Velascoらの論文(論-1)

スペインにおける20~45歳の成人健常者22

名(男性6名、女性16名)を対象に、ヒドロ

キシチロソールを含む摂取群とそれを含まない

ヒマワリ油摂取群(対照群)と比較し、ヒドロ

キシチロソールを1日摂取量として45mg~

50mgを3週間経口摂取した結果、対照群と比

較して血中酸化LDLコレステロール値の統計

学的に有意な減少を認めた。

#2 de la Torre-Carbotらの論文(論-2)

欧州諸国(スペイン、デンマーク、フィンラン

ド、イタリア、ドイツ)における20~60歳の

非喫煙成人健常男性36名を対象に、ヒドロキ

シチロソールを含む摂取群とそれを含まないオ

リーブ油摂取群(プラセボ群)と比較し、ヒド

ロキシチロソールを1日摂取量として1.59mg

を3週間経口摂取した結果、対照群と比較し

て血中酸化LDLコレステロール値の統計学的

に有意な減少を認めた。

#3 Mateosらの論文(論‐3)

スペインにおける22~37歳の成人健常者13

名(男性3名、女性10名)を対象に、ヒドロ

キシチロソールを1日量として平均5.25mg含

むビスケットを単回摂取した結果、ヒドロキシ

チロソールを含んでいないプラセボ群と比較

し、摂取後0.5時間値および4時間値におい

て、血中酸化LDLコレステロール値の統計学

的に有意な減少を認めた。

対し、大倉工業社の採用文献は次の4報。

#A Perrone MAら(2019)(採用文献1)

18~65歳の健常成人22名を対象としてオリ

ーブ由来ヒドロキシチロソール9.4mg/日を含

むオリーブオイルまたはオリーブ由来ヒドロキ

シチロソールを低量含むプラセボオイルを単回

摂取させた。酸化LDL値、MDA-LDL値とも

に被験品群は摂取前に比較して有意な低減効果

が認められた。

#B Cabotら(2010)(採用文献2)

健常男女36名(32~62歳)を対象として、

オリーブ由来ヒドロキシチロソール1.59mg/日

含有するオリーブオイルまたは、オリーブ由来

ヒドロキシチロソールを含まないオイルを1

日1回3 週間継続して摂取させた。3週間摂

取後、被験品群は血中酸化LDLコレステロー

ル値、MDA-LDL値ともにプラセボと比較し

て有意な低下の効果が認められた。

#C Colicaら(2017)(採用文献3)

健常男女28名(32±12歳)を対象として、

オリーブ 由来ヒドロキシチロソール15mg/日

含有カプセル、またはオリーブ由来ヒドロキシ

チロソールを含まないプラセボを1日2カプ

セル、昼食の2時間前に3週間継続して摂取

させた。血中酸化LDL値に群間有意差は認め

られなかった。

#D Mateosら(2016)(採用文献4)

健常男女13名(22-37歳)を対象として、オ

リーブ由来ヒドロキシチロソール5.25mg/日含

有するビスケットまたはオリーブ由来ヒドロキ

シチロソールを含まないプラセボビスケットを

単回摂取させた。被験品はプラセボと比較して

酸化 LDL値に有意な低減効果が認められた。

#2 = #B、#3 = #Dです。

しかも、大倉工業社の残りの#Cは有意差な

く、#Aは群内のみ。

但、よく見ると、大倉工業社には、さくらフォ

レスト社にはなかった「MDA-LDL値」とい

う指標があり、これは#Bにおいて群間有意差

が認められています。

この点がさくらフォレスト社とは違う点で、こ

こに受理の理由があったと言えます。

さくらフォレスト社がなぜMDA-LDL値を拾

わなかったのかは謎ですね。