機能性表示最新情報 136 号 / 熟成ホップ由来

こんにちは。

YDCのミッシーです。

年内の機能性表示最新情報 は、今 号が
最後となります。

2019年を振り返ってみると、年明けの
HMB撤回問題に始まり、エキス解禁など、
機能性表示関係で色々なことがありました。

受理件数が大きく伸びているのも今年の
特徴です。

来年はさらなる飛躍の年になるかも
しれませんね。

さて、

それでは今回の機能性表示最新情報 を
ご紹介します。

E522 ホップの力

「本品には熟成ホップ由来苦味酸が含まれます。
  熟成ホップ由来苦味酸には体脂肪を減らす
  機能があることが報告されています。」

熟成ホップ由来苦味酸は上記も含めて3つの
事例があり、届出者はいずれもキリンさん
(キリンHDまたは麒麟麦酒)です。

過去の2事例(C356、D421)はRCT、今回の
E522は、そのRCTを採用論文の一つとした
SRです。

さてそのSRですが、著者からのデータ入手あり、
複数の層別解析あり、メタアナリシスあり、
と非常に込み入ったものになっています。

どうしてそうなっているのか、を見る前に、
過去のRCTの2事例を振り返ってみます。

C356、D421はどちらも同じRCT論文を採用して
いました。

届出表示もE522とさほど変わりません。

論文ではBMI25以上30未満の178名を解析対象と
していました。

内臓脂肪100平方cm未満の層別解析は行って
いません。

以前にも扱いましたが、消費者庁は一時期、
BMI25以上で内臓脂肪100平方cm以上は病者とする
判断をしていました。

しかし、この運用基準は、現在では問われません。

C356はその過渡的な時期であったため、最初に
この事例を見たときは不思議に思ったものです。

さて、E522にもどりましょう。

このSRでは[1]山崎2016、[2]小泉2016、
[3]Morimoto-Kobayashi2016の3報が
採用されています([3]が先の2事例の
RCT論文です)

まず、何の処理もしない結果だけを見ると、
[2]と[3]の熟成ホップ由来苦味酸35mgでは
それぞれ群間有意差があります。

よって、ここでそのまま終わって、結論と
してしまってもよいように思いますが、
E522では、いずれの文献にも内臓脂肪
100平方cm以上の者が含まれるとして、
層別解析を行っています。

その結果、群間有意差有は[2]の35mg摂取
のみとなります。

ちょっと苦しくなりましたが、説明に
よってはこの結果でも何とかなるかも
しれません。

しかし、E522はそこからさらに
メタアナリシスを行います。

その結果は、有意な減少が認められないと
いうもの。

そこで、この結果は異質性が高いとして、
[1]の文献から、熟成ホップ由来苦味酸
11.7㎎摂取群を取り除いて、再度の
メタアナリシスを実施。

この結果は異質性が低く、総脂肪面積の
有意な減少が認められたとして、最終的な
結論としています。

内臓脂肪100平方cm以上の者を除こうとした
結果、

エビデンスとしてはかえって弱くなるという、
ほろ苦いSRとなっていることがわかります。

それにしても、内臓脂肪面積100平方cm以上の
層別解析にこだわったのは、この点が最近では
問われなくなったことを知らなかったのかも
しれません。

内臓脂肪面積の件などは、運用レベルでの
判断基準の変化になるわけですが、

こういう変化をきちんと押さえておくことが
やはり重要だということを確認して、本年の
機能性表示最新情報 を終えたいと思います。

少し早いですが、皆様、よいお年を
お迎えください。

それでは、また、来年メールしますね。