機能性表示最新情報 278号 / 消去法による成分の設定

こんにちは。YDCのミッシーです。

今年も残すところ後僅か。この時期にはいつ
もお知らせしていますが、年末には届出デー
タベースのログインが混みあったり、正月休
み影響で受理の時期が予想よりもずれたりす
ることがありますので、申請を考えている皆
様は余裕をもった申請をお勧めします。

それでは今回の機能性表示最新情報をご紹介
します。

◆H637 伊藤園 はと麦茶

「本品にはバニリン酸が含まれます。バニリ
ン酸には、肌が乾燥しがちなミドルエイジの
方の肌の潤いを維持する機能があることが報
告されています。」

バニリン酸は初出の成分で、1報採用のSRに
よる届出です。その文献では、角層水分量が
低値の者を対象者とし、水分蒸散量と角層水
分量を効果指標としています。

対象者の全例解析で、どちらの指標も有意差
なし。そこで、40歳以上のサブグループ解析
をしたところ、角質水分量で群間有意差が
あったことから、「ミドルエイジの方の肌の
潤いを維持する機能」が導かれています。

ただし、水分蒸散量については、サブグルー
プ解析でも群間有意差なし。さらに、上記し
た角質水分量についても、プラセボ群でも群
内に有意差(改善)が確認されていて、結果
全体を見ると少しちぐはぐな印象があります。
H637ではこの辺りについては特に触れていま
せんが、もう少し説明や考察が欲しい所では
ないでしょうか。

ところで、「試験食品ははと麦茶であるため、
様々な栄養成分を複合的に含有する」としな
がらも、H637の機能性関与成分について、バ
ニリン酸と設定しているのは次のようなロ
ジックによるものです。

(1)作用機序から、肌の保湿機能の維持・
改善効果を発揮する栄養成分の候補として、
抗酸化能や抗炎症作用を持つ成分が挙げられ
る。

(2)野菜が持つ抗酸化力とポリフェノール
含有量は正の相関関係があることまた試験食
品の原料となるはと麦には、同じく抗酸化作
用を持つビタミンCがほとんど含有されてい
ないことから、試験食品内において肌の保湿
機能の維持・改善効果に関わった成分はポリ
フェノール類であると考えられる

(3)試験食品が主要に含有するポリフェ
ノールは、バニリン酸とp-クマル酸である

(4)バニリン酸は、マウスや培養細胞を用
いた研究により、てバリア機能の低下に繋が
る皮膚炎症反応を抑える効果があることが報
告されている

(5)p-クマル酸は、同様の作用に関する報
告はこれまでのところ無い

機能性関与成分を設定する方法としては、動
物試験や細胞試験で作用を確認する方法がよ
く見られますが、上記のように消去法のロ
ジックで絞り込んでいくやり方もあります。

この方法では新たに試験などをしなくともす
みますが、そもそも前提としての知見が豊富
になくてはできませんし、新たな知見が出た
時にひっくり返る(問えば上記(5)p-クマ
ル酸について同様の作用が報告される)可能
性はあり、確実性は少し劣ると思います。ど
ちらのやり方を採用するかは、よく検討が必
要ではないでしょうか。

それでは、またメールしますね。