1.水面下情報(その1)
(1)繰り返し書いていますように、
機能性表示の表現>>群間有意差必要
作用機序の表現>>群間有意差不要
が現在の運用です。
従って、いまいちのエビデンスは作用機序として
使うことを考えればよいということになります。
(2)そういう事例ではないかと思える事例が先週
出てきました。
E60がそれです。
届出者:味の素株式会社
商品名:「アミノエールゼリータイプ ロイシン40」
届出表示:本品にはロイシン40%配合必須アミノ酸※
が含まれます。
ロイシン40%配合必須アミノ酸※は、足の曲げ伸ばし
などの筋肉に軽い負荷がかかる運動との併用で、
加齢によって衰える筋肉の合成をサポートすることにより、
歩行機能の向上に役立つことが報告されています。
撤回したB513(アミノエールゼリー ロイシン40)
のReplacement商品です(この点は水面下情報(その2)
をご覧ください)。
(3)従来型で採用していたBukhari2015を本件では
採用せず、代わりにIspoglou2016を採用。
その結果「筋肉をつくる」の位置づけが異なります。
つまり、従来型では、「筋肉をつくる力をサポート
する機能」と機能性に位置付けていましたが、
本件では「筋肉の合成をサポートすることにより」
と作用機序に位置付けています。
Bukhariを捨てた理由は定かではありませんが
女性のみを対象としている点を指摘され
差戻されたのかもしれません。
2.水面下情報(その2)
(1)「歩行能力の改善」の表示に関して厚労省から
薬事法違反との指摘が入り、C400以外はすべて
撤回しました。
(YDC 機能性表示データブック1-4-5-1 >>>
https://www.yakujihou.com/kinousei/kinoudb-top/
こちらは会員様のみご覧いただけます)
但し、C400の届出表示は
「本品にはロイシン40%配合必須アミノ酸※が
含まれます。ロイシン40%配合必須アミノ酸※は、
脚の曲げ伸ばしなどの筋肉に負荷がかかる
軽い運動との併用で、60代以上の方の加齢によって
衰える筋肉をつくる力をサポートすることにより、
歩行機能の改善に役立つことが報告されています。」
で、「歩行機能の改善」と表示していました。
(2)E60の表示は「歩行機能の向上に役立つ」。
採用文献もC400と同じ。
E60はC400を残したことの正当性を補強した感が
あります。
■■■——————————————–
YDCでは機能性表示のポータルサイトを用意して
いますので是非ご覧下さい。
但、重要な情報はYDCの会員(シルバー以上)に
ならないと見れません。
会員に対するお問い合わせは >>>
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3.注目すべき受理事例
E33
*SR論文のようでそうでない不思議なSR
A.商品名:ベータプラス
B.届出者:富士産業株式会社
C.関与成分:ベータコングリシニン
D.届出表示:本品にはベータコングリシニンが
含まれます。ベータコングリシニンは血中中性脂肪を
低下させるとともに、高めのBMIを低下させる機能が
報告されています。本品は、中性脂肪や高めのBMIが
気になる方に適しています。
E.コメント:
・関与成分量は2.3g/日。SRは不二精油。初出の成分。
・文献は1報で、過去6報の文献を再解析してまとめたもの
(廣塚2018)〔(1)Kambaraら2004(RCT複数),
(2)Bataら2004, (3)Oharaら2006, (4)Kohnoら
2006(RCT複数), (5)Horiら2009, (6)Kohnoら
2012(RCT複数)〕。
・廣塚2018のタイトルは「大豆β-コングリシニンの
機能性表示食品としての可能性検証」で、6論文を
検証している。
一見SR風だが、追加解析を行って機能性表示の届出に
使えるようにする点に目的があったと思われる。
・それゆえ、これ自体をSR論文と位置づけるのではなく、
これを論文と捉え、そこからさらにSRを作成している。
■血中中性脂肪:文献3件((1), (3), (4)-1)
(1);N87中、病者(200mg/dL以上)を含んでいたため
病者を除外し、やや高め(150-199mg/dL)の
層別解析を実施(高用量・低用量併せて3群でN33)。
正常域(149mg/dL以下、N21)の解析は元の論文の通り。
(3);N129中、病者(200mg/dL以上)を含んでいたため
病者を除外し、やや高め(150-199mg/dL、N20)と
正常域(149mg/dL、N15)の層別解析を実施。
(4)-1;元の論文の対象は150mg/dL以上だった(N138)。
病者を除外し、やや高め(150-199mg/gL、N49)
で層別解析。
・やや高め(150-199mg/gL)を解析対象とした(1)
(高用量・低用量),(3), (4)-1で群間有意差あり。
・(5)の試験は150-400mg/dLを対象としており(N21)、
やや高め(150-199mg/gL、3群でN13)で層別解析を
実施するも群間有意差なく、結果の表も記載なし。
■BMIおよび体脂肪:
文献3件((1), (4)-2, (6))
(1);N87中、病者(BMI 30以上)を含んでいたため
病者を除外し、25-30未満の軽症者(N34)と
23-25未満の正常高値者(N16)で層別解析を実施。
(4)-2;腹囲85cm以上(男)または90cm以上(女)で
BMI 25-30未満を対象としていた(N102)が、
内臓脂肪面積100平方cm以上を含んでいたため、
内臓脂肪100平方cm以上を除外し層別解析を実施(N49)。
4.6mg摂取。
(6);腹囲90cm以上でBMI 25以上の男性N30中に、内臓脂肪
面積100平方cm以上が多かったため、除外して
層別解析を実施(N7)。
・(1)のBMI(2.3g)で群間有意差あり。
(4)-2, (6)の内臓脂肪面積, 皮下脂肪面積,
全脂肪面積は群間有意差なし((4)-2の4.6gで
内臓脂肪面積の群間有意差あり)。
・(2)(5g摂取)はCTによる解析がないとして再解析せず。
■サンプルサイズ:
・廣塚2018は、中性脂肪に関して150-199mg/dLで層別解析を
行うと、2.3g摂取群5名、1.15g摂取群4名、コントロール群
4名となり、Nが小さくて群間有意差が出ない。
そこでG*Powerを用いて補正する。
つまり、「試験食品とコントロール群の変化量と
標準偏差をもとに、αエラーを0.05、検出力(1-β)を
0.8と設定し算出した結果、N36名/群となり(検出力0.806)、
一般的な食品で執り行われるヒト試験の規模により
群間比較での有意差が認められる十分効果が期待できる
ものと考えられる」。
・要は、N36, 検出力0.806という条件で行われていれば
p=0.05だったので有効性ありと考えてよい、としている
(体脂肪についても(6)につき同様のロジックで説明
している)。
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