薬機法・薬事法とは? 概要説明と主要な法令を紹介【弁護士監修】
更新日2024/7/23
薬機法(旧薬事法)では医薬品や医療機器、化粧品などの製造・販売から広告に至るまで、さまざまな規制やルールが定められています。薬機法に違反すると、課徴金納付や業務停止などの重い罰則が科せられ、企業にとって多大な経済的損失となるばかりか、社会的信用を失うことにもなりかねません。
本記事では、薬機法とは何か?薬事法との違いは何かという薬機法の基礎知識を解説しています。主要な法令もまとめましたので薬機法について知りたい方はご覧ください。
1.薬機法とは
薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称で、医薬品等の品質や有効性、安全性を確保し、保健衛生の向上(国民の生命や健康を守ること)を目的とした法律のことです。
医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(以下、「医薬品等」という。)について、開発・承認・製造・販売・広告などに関する規制を定めています。
また、薬機法は、医薬品等に関する規制を定めた法律ですが、実は「医薬品等以外のもの」でも薬機法違反になる場合があります。たとえば、健康食品や健康・美容雑貨にもかかわらず、医薬品等であるかのような効能効果をうたうと薬機法違反になります。
したがって、薬機法は医薬品等に限らず、健康食品や健康・美容雑貨などを取り扱う際も、必ず理解しておくべき法律といえます。
▼薬機法の違反行為や罰則について詳しく知りたい方は以下も合わせてご覧ください。
薬機法の違反行為と罰則、対策をまとめて解説
2.「薬事法」と「薬機法」の違い
薬事法と薬機法は同じ法律です。
薬機法は、以前は「薬事法」という法律でしたが、2014年(平成26年)の法改正に伴い、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に名称が変更されました。法律の正式名称を略して「医薬品医療機器等法」や「薬機法」と呼ばれることもあります。
薬事法から薬機法への改正では、規制対象として「再生医療等製品」が新設されたほか、医療機器の対象として、診断などに用いる単体プログラム(ソフトウェア)が追加されるなど、新たな規制・ルールが定められました。
3.薬機法の広告規制
医薬品等について誤った情報が発信されると、消費者が誤った使い方をしたり、効能効果を過度に期待して、本来必要な治療を受けずに症状が悪化したりする可能性があります。 広告によって消費者に誤解を与え、健康被害が発生するのを防ぐために、薬機法では第66条~68条にて医薬品等の広告規制を設けています。
ポイントは次の3点。
- 医薬品等の効能や効果、性能に関する虚偽・誇大広告や、医師などが保証したと誤解されるおそれのある広告は禁止。
- 特定疾病の治療薬については、医師などの医薬関係者を対象にした広告に限って認めており、一般人を対象にした広告は禁止。
- 承認を受けていない医薬品等の名称、製造方法、効能、効果、性能に関する広告は禁止。
また、これらの規制の対象者は「何人も」とある通り、広告主や広告代理店、広告を掲載した媒体(Webサイトや新聞、雑誌、テレビなど)はもちろん、アフィリエイターやインフルエンサーが含まれます。
医薬品等の広告について(薬機法第六十六条、第六十七条、第六十八条)
医薬品等適正広告基準でも医薬品などの広告制限について詳しく記載されています。以下に該当する内容をまとめました。
4.薬機法の目的(薬機法第一条)
薬機法の目的(薬機法第一条)
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
国の責務(第一条の二)
国は、この法律の目的を達成するため、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保、これらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止その他の必要な施策を策定し、及び実施しなければならない。
都道府県等の責務(第一条の三)
都道府県、地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の政令で定める市(以下「保健所を設置する市」という。)及び特別区は、前条の施策に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施しなければならない。
医薬品等関連事業者等の責務(第一条の四)
医薬品等の製造販売、製造(小分けを含む。以下同じ。)、販売、貸与若しくは修理を業として行う者、第四条第一項の許可を受けた者(以下「薬局開設者」という。)又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設(獣医療法(平成四年法律第四十六号)第二条第二項に規定する診療施設をいい、往診のみによつて獣医師に飼育動物の診療業務を行わせる者の住所を含む。以下同じ。)の開設者は、その相互間の情報交換を行うことその他の必要な措置を講ずることにより、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。
医薬関係者の責務(第一条の五)
- 1 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品等の有効性及び安全性その他これらの適正な使用に関する知識と理解を深めるとともに、これらの使用の対象者(動物への使用にあつては、その所有者又は管理者。第六十八条の四、第六十八条の七第三項及び第四項、第六十八条の二十一並びに第六十八条の二十二第三項及び第四項において同じ。)及びこれらを購入し、又は譲り受けようとする者に対し、これらの適正な使用に関する事項に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
- 2 薬局において調剤又は調剤された薬剤若しくは医薬品の販売若しくは授与の業務に従事する薬剤師は、薬剤又は医薬品の適切かつ効率的な提供に資するため、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第六十四号)第十二条の二第三項の規定による情報の提供その他の厚生労働省令で定める方法によつて、医療を受ける者の薬剤又は医薬品の使用に関する情報を他の医療提供施設(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の二第二項に規定する医療提供施設をいう。以下同じ。)において診療又は調剤に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供することにより、医療提供施設相互間の業務の連携の推進に努めなければならない。
- 3 薬局開設者は、医療を受ける者に必要な薬剤及び医薬品の安定的な供給を図るとともに、当該薬局において薬剤師による前項の情報の提供が円滑になされるよう配慮しなければならない。
国民の役割(第一条の六)
国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。
出典元:薬機法 第一条(目的)
5.薬機法の定義(薬機法第二条より抜粋)
医薬品
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
- 一 日本薬局方に収められている物
- 二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
- 三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
医薬部外品
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
- 一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
- イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
- ロ あせも、ただれ等の防止
- ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
- 二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
- 三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
化粧品
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
医療機器
この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
再生医療等製品
この法律で「再生医療等製品」とは、次に掲げる物(医薬部外品及び化粧品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
- 一 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの
- イ 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成
- ロ 人又は動物の疾病の治療又は予防
- 二 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの
体外診断医薬品
この法律で「体外診断用医薬品」とは、専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう。
出典元:薬機法 第二条(定義)
この記事の監修を担当した弁護士
薬事法ドットコム
パートナー弁護士 西脇威夫
一橋大学法学部卒。元ナイキ・インハウスロイヤー、エンターテインメント・ローヤーズ・ネットワーク会員、日本スポーツ法学会会員 他。
法人の設立、商業取引(英文及び和文の各種契約の作成・レビュー、ブランド保護、偽物対策、独禁法のアドバイス等)、人事労務、コンプライアンスについて、経験豊富。
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