【薬機法】雑貨(雑品)広告のチェックポイント
雑貨(雑品)事業に従事する方、あるいはそれら事業の広告を取り扱う方のために、薬機法(旧・薬事法)観点で注意すべきことを網羅的にまとめました。
雑貨(雑品) は薬機法では定義されていない
日常でよく使われる言葉であり、今さらかと思われるかもしれませんが、実は雑貨(雑品)は、薬機法という法律で定義されていません。
薬機法は、基本的には医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の品質・有効性および安全性を確保することを目的とした法律です。
法令にてそれぞれ定義されていますので、詳しくは薬機法の解説をご確認ください。
したがいまして、雑貨(雑品)は、薬機法規制の対象外となります。
ただし、雑貨(雑品) にもかかわらず「シワ・ニキビが治る」「おなかのぜい肉がスッキリ!」などの効果効能を標ぼうした広告をして販売すると、法律上、医薬品や医療機器とみなされ、薬機法に抵触します。
結果、無免許での医薬品や医療機器の販売のみならず、未承認の医薬品・医療機器広告を禁止する第68条違反(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)になるので注意が必要です。
チェック1:雑貨(雑品)の定義を知ろう
薬機法上、雑貨(雑品)の定義は特になく、業界によっても捉え方が異なります。
参考までに、あくまで一般例としての雑貨(雑品)を下記に挙げます。
- メーキャップブラシ
- つけまつ毛
- あぶらとり紙
- ウエットティッシュ
- ヘアブラシ
- 歯ブラシ
- 空間用フレグランス(お香、アロマキャンドル等)
シャンプー・リンス、化粧水などを、薬機法が規制する主要な対象物に照らし合わせると、顔や身体に使う商品である以上、雑貨(雑品)扱いにはならず、すべて製造や販売に届出・承認が必要となる医薬部外品・化粧品になります。
一方で、商品の中には用途・目的によって、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品扱いにもなるし、雑貨(雑品)扱いになるものもあります。
商品 | 分類 | 目的 | 製造・販売 |
---|---|---|---|
石けん | 医薬部外品・化粧品 | 顔や身体に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 台所や洗濯に用途を限られ、顔や身体に使うことは認められない。 | 届出・承認が不要 | |
除菌スプレー | 医薬品 | 殺菌による菌の除去に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | ふき取ること、洗い流すことによる菌の除去に用途を限られ、殺菌による菌の除去に使うことは認められない。 | 届出・承認が不要 | |
マスク | 医療機器 | 細菌やウィルスに対する殺菌・不活化効果、感染症予防に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 単に物理的な除去に用途を限られ、細菌やウィルスに対する殺菌・不活化効果、感染症予防に使うことは認められない。 | 届出・承認が不要 | |
手袋 | 医療機器 | 医療機関等で患者および使用者を交差感染から守るのに使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 単に手に汚れがつかないことに用途を限られ、交差感染から守ることは認められない。 | 届出・承認が不要 | |
虫除け | 医薬品・医薬部外品 | 衛生害虫の駆除や忌避に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 植物を虫から守ることに用途を限られ、衛生害虫の駆除や忌避は認められない。 | 届出・承認が不要 | |
浴用製品 | 医薬部外品・化粧品 | 届出・承認が必要 | |
雑貨(雑品) | 色を楽しむ(=お風呂の着色料)、香りを楽しむ(=お風呂の香料)ことに用途を限られる。 | 届出・承認が不要 |
|
エッセンシャルオイル | 医薬部外品・化粧品 | 身体への芳香付け、肌への効果に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 空間・水の芳香付けに用途を限られ、身体への芳香付け、肌への効果に使うことを認められない。 | 届出・承認が不要 | |
マッサージ関連機器 | 医療機器 | マッサージ効果をうたうことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 単にモーターで振動するおもちゃに用途を限られ、マッサージ効果をうたうことは認められない。 | 届出・承認が不要 | |
遠赤外線製品 | 医療機器 | 赤外線を原理として疾病の治療や予防に使うことが認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 空間の暖房や保温効果に用途を限られ、赤外線を原理として疾病の治療や予防に使うことは認められない。 | 届出・承認が不要 | |
美容関連器具 | 医療機器 | シミ・ソバカスの除去、 たるみを引き締め小顔に、血行の改善、新陳代謝促進、毛根に作用して半永久脱毛に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 身体の構造・機能に影響を与えないもので、単に美容(洗顔や化粧品を塗る動作の代用程度)に用途を限られ、シミ・ソバカスの除去、 たるみを引き締め小顔に、血行の改善、新陳代謝促進、毛根に作用して半永久脱毛に使うことを認められない。 | 届出・承認が不要 | |
聴力補助・集音器具 | 医療機器 | 聴力障害(老人性のものも含む)者の聴力を補助に使うことを認められる。 | 届出・承認が必要 |
雑貨(雑品) | 健常者を対象とし、騒がしい環境等の中で遠くの音や特定の音域の音を拡張して聞くことに用途を限られ、聴力障害(老人性のものも含む)者の聴力を補助に使うことは認められない。 | 届出・承認が不要 |
チェック2:雑貨(雑品)の広告規制を知ろう
雑貨(雑品)事業に従事する方、あるいはそれら事業の広告を取り扱う方が特に抑えておくべきなのが、広告規制です。
前述した通り、雑貨(雑品)は、薬機法上の定義はありませんが「シワ・ニキビが治る」「おなかのぜい肉がスッキリ!」などの効果効能を標ぼうした広告をして販売すると、法律上、医薬品や医療機器とみなされ、薬機法に抵触します。
承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(第68条))
何人も、第14条第1項又は、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
その他、雑貨(雑品)の広告で確認しておくべき法令として下記に代表的なものをピックアップしました。
薬機法以外でも確認すべき法令
景品表示法
商品やサービスの品質・内容・価格等をいつわった表示や、過大な景品類の提供を防ぐための法令です。
たとえば最近では、洗濯機に入れると、洗剤を使った時と同レベルの洗浄効果があるとうたった商品が、合理的根拠なしとされ、行政処分をくだされています。
違反した場合は、行政による措置命令や課徴金が課され、その事実が消費者庁HPやNEWS等でも一般公開されますので、注意が必要です。
薬事法ドットコムでは、景表法の概要やリスク、ケーススタディから万が一、行政から指導が入った場合の対応方法に至るまで、わかりやすく解説したガイドブックもご用意しています。
特定商取引法
その他
薬事法ドットコムでは、薬機法・景品表示法・特定商取引法などの主要法令以外におさえておきたい行政通知や業界ルールもまとめています。
そもぞも雑貨(雑品)を扱う際、何に注意すれば良いかわからない!という方は、ぜひご覧ください。
チェック3:雑貨(雑品)の違反表現を知ろう
原理原則がわかったところで、具体的なOK/NG例を知ると、実務で判断する際の勘所が磨かれていきます。
ここでは、雑貨(雑品)の広告で認められる表現と認められない表現について、一部ご紹介いたします。
商品種別 | 認められる表現 | 認められない表現 |
---|---|---|
電動のもみ玉を内蔵したクッション | もみ玉による効果が「リフレッシュする」や「気持ちよくなる」「活き活きする」等の抽象的な変化ならOK。 | コリや血行促進を標榜する場合は、クラスIIの家庭用管理医療機器に該当するため、NG。 |
脚用の枕 | 足を動かす等のエクササイズやストレッチを絡めれば、「疲れやむくみ解消」はOK。 | 体が何もしない状態で薬理的な作用を述べることは医療機器的なのでNG。 |
骨盤ショーツ | 骨盤ショーツを着けるだけでなく日常の動きが必要ということが示せれば「ウエストが細くなる」はOK。 | 骨盤ショーツを着ければそれだけでウエストが細くなるというロジックはNG。 |
寝る前に顔につけるギア | 寝ている間は顔が引き締められると解釈できるのなら「小顔になる」はOK。 | 寝た後も小顔と解釈できるのならNG。 |
まぶたにつける粘着力のあるリキッド | 粘着力で二重になるというロジックなら「パッチリ二重に︕」はOK。 | 「ずっと二重に︕」だと、粘着が取れた後もそうだと言うことになるのでNG。 |
美顔器 | 化粧品の効能の範囲内で、なおかつ手の代用として言えるレベルであれば「肌の引き締め効果」「保湿」「肌荒れ予防」「汚れの除去」などはOK。 | 「シミ」は、手の代用として言えるレベルを超えていると評価されており、NG。 |
ハーブの香りがする枕 | リラックスできる雰囲気をつくるという意味なら「リラックス」はOK。 | 香りの効果としての「リラックス」は、体内に成分を取り込んで身体の機能に薬理的な影響を及ぼしたという意味に取れるのでNG。 |
シューズ | シューズをはいている間だけ矯正と解釈できれば「O脚矯正」はOK。 | 脱いだ後も「O脚矯正」と解釈されるとNG。 |
薬事法ドットコムでは、上記のように薬機法や景表法を踏まえた代替表現集をご用意しています。
広告審査が通らずお悩みの事業会社や広告代理店の方、健康・美容関連の案件で優位性を持ちたいライター・アフィリエイター・インフルエンサーの方に好評です。
薬機法を知るべき理由、知らないことのリスク
いくら魅力的な化粧品やビジネスモデルを持っていても、薬機法を知らなかったばかりに、違反となるとどうなるでしょう?
前述した罰金だけでなく、行政指導や製品回収・広告中止による損害、レピュテーションリスクなど、事業運営に多大な影響を及ぼします。
日頃からチェック体制やいざという時の対応スキームを整備しておくことが大切です。
繰り返しになりますが、薬機法の規制対象は「何人(なんびと)も」と記載あるように、広告主に限定しません。
広告に関与すれば、メディアや広告代理店、制作会社のほか、アフィリエイター・インフルエンサー・ライターも規制対象となる点も注意を要します。
こんな悩みがあれば、お気軽にお問い合わせください。
- 自社がどの程度薬機法リスクがあるのか分からない
- 広告表現チェックはできても、良い代替表現が見つからない
- チェックやマニュアルに基づくの法令遵守体制をつくりたい
- 社員教育やセミナーをして欲しい
- 課徴金制度を踏まえた、売上アップの方法を知りたい
薬事法ドットコムは、国内最高峰の薬事コンサルティング企業として、高級官僚OB(大蔵省・厚生省・警察庁)、元検事長・政府委員など、法律・行政・医学・統計学・マーケティングの権威が集結。
最新の動向を踏まえ、マーケティング効果と法令遵守のバランスを第一に考えたコンサルティングを提供いたします。
「何を相談したら良いか分からない」という疑問から、まずはお気軽にお問合せください。
この記事の監修を担当した弁護士
薬事法ドットコム
パートナー弁護士 西脇威夫
一橋大学法学部卒。元ナイキ・インハウスロイヤー、エンターテインメント・ローヤーズ・ネットワーク会員、日本スポーツ法学会会員 他。
法人の設立、商業取引(英文及び和文の各種契約の作成・レビュー、ブランド保護、偽物対策、独禁法のアドバイス等)、人事労務、コンプライアンスについて、経験豊富。
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