こんにちは。YDCのミッシーです。
先日、 健康食品産業協議会より、PRISMA2020
でSRを作成する際の留意点についてまとめたも
のが公表されました。
この資料は3月13日に開かれた「保健機能食品
等に関する説明会」にて業界団体から提出され
たものとして、消費者庁のHPにも掲載されてい
ます。
food_labeling/foods_with_health_claims/
それだけを見ると、消費者庁の公認のようにも
見えますが、少し気になるところもあります。
消費者庁からの指摘でよく見るものとして、報
告バイアスに関する次の指摘があります。
#14 報告バイアスの評価方法の記載として十分
か。下記について具体的に記載する必要がない
か。
(1) 出版・言語バイアス等の回避を目的とした
網羅的な検索(臨床試験計画登録UMINCTRや
ICTRP などの検索)
(2)選択的アウトカムバイアス等の回避を目的
とした採用論文の不明確な情報の取得(試験方
法の不明確な点、例えばランダム化や盲検化、
欠測となっているデータなどに関する著者への
問い合わせなど)
(3)(メタアナアリシス時)ファンネルプロッ
ト等を使った出版バイアスの評価段階とその評
価基準(どのような基準で各評価段階に落とし
込んだか)を含めた方法を記載する必要がない
か。また、(1)(2)の結果をどのように評
価に反映することとしていたか。
一方、健康食品産業協議会の資料では#14の記
載ポイントとして以下のようにあります。
・採用文献の研究内の特定の結果の欠測ではな
く、採用した研究全体に含まれなかった研究を
評価する方法を評価基準を含めて記載する。
・例えば、臨床研究登録データベースの検索等
を実施し未報告研究の扱いを評価基準とする。
・レビューワーの数、独立して作業した旨、判
断方法 (例:A, B不一致の場合、第三者が仲裁
に入る等) を記載する。
比較して見ると、消費者庁の指摘の(2)と、
健康食品産業協議会の資料の一番上の記載ポイ
ントはかみ合わない印象があります。(2)は
明らかに個別の文献の欠損データを焦点として
いますが、健康食品産業協議会の方では「研究
内の特定の結果の欠測ではなく」と言っていま
す。
どちらが正しいという話ではなく、どうも重視
しているポイントが両者で異なるような感じが
します。おそらく、健康食品産業協議会の資料
だけを頼って、(2)の視点が抜けていると、
指摘が来るのではないでしょうか。そう考える
と、健康食品産業協議会の資料は役には立つが、
これだけでは足りない、といった感じがします。
そういった点を補えるような、PRISMA2020に関
するその他の資料としては、
「PRISMA 2020 explanation and elaboration:
updated guidance and exemplars for
reporting systematic reviews」といった論
文があります(https://www.bmj.com/content
他には以前にメルマガで紹介した、薬理と治療
1月号に掲載された、東京農業大学の上岡氏の
PRISMA2020準拠SRの質に関するレビュー論文。
その付録として、「PRISMA2020におけるチェッ
クリストの詳細版(細目)」という資料があり
ます。この資料では、上記のPRISMA 2020
explanation and elaborationにおいて各項目
に記載するEssential elementsとしている部分
が和訳して載せられています。
ちなみに、上記論文では#14 のEssential
elementsとして、「Report any processes
used to obtain or confirm relevant
information from study investigators.」と
いう記載があります。消費者庁の(2)の指摘
に対応した部分と思います。ただ、これは7項
目挙げられているうちの1つにすぎません。興
味のある方は論文をご確認ください。
それでは、またメールしますね。