1.水面下情報
(1)届出表示における機能性表現と作用機序表現の
取扱いの運用上の差についてはこれまでもこの
メルマガで言及してきました。
つまり、両者ともヒト試験のエビデンスが必要な
事は同じ。
しかし、前者は群間有意差や査読雑誌への掲載が
求められるが、後者はそうではない。
(2)この水面下の運用が先週の受理事例で表に出て
来ました。E1がそれです。
1.まず、私どものデータブック
に掲載している情報をご覧下さい。
A.商品名:MANGOSTIA(マンゴスティア)
B.届出者:日本新薬株式会社
C.関与成分:ロダンテノンB
D.届出表示:
本品にはロダンテノンBを含みます。
ロダンテノンBは、糖化ストレスを軽減すること
により肌の潤いを保持する機能があります。
E.コメント:
・関与成分は160μg/日。初出成分。
・RCT。ダブルブラインドパラレル。12w。
被験者はN20×2(解析対象はN19×2)。
アウトカムは糖化ストレスと肌の水分値。
糖化ストレスはAGEs(最終糖化物)と
血中ペントシジン濃度の相関関係から
ペントシジンで評価。
肌の水分値はコルネオメーターで評価。
・肌水分値は8w、12wにおいて、群間有意差あり。
他方、ペントシジンは8wにおいてactiveでは
群内有意差ありplaceboではなしだが、群間有意差は
得られていない。そこで届出表示においては
糖化ストレスに関しては「糖化ストレスにより」と
作用機序と位置付けている。
2.以上より、届出表示における「糖化ストレスを軽減」と
「肌の潤いを保持」の使い分けがご理解できると思います。
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YDCでは機能性表示のポータルサイトを用意して
いますので是非ご覧下さい。
但、重要な情報はYDCの会員(シルバー以上)に
ならないと見れません。
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2.注目の受理事例
(1)D689
*チャレンジングな層別解析
A.商品名:ファイバイタル 肉野菜みそスープ
B.届出者:エースコック株式会社
C.関与成分:イソマルトデキストリン(食物繊維)、
D.届出表示:
本品にはイソマルトデキストリン(食物繊維)が
含まれます。イソマルトデキストリンは血糖値が
上がりやすい方の食後の血糖値や、食後の
血中中性脂肪が高めの方の食後の血中中性脂肪の
情報をおだやかにする機能が報告されており、
食後の血糖値の上昇や血中中性脂肪の高さが気に
なる方に適しています。
E.コメント:
■関与成分量は2.13g/日。
■食後血糖値
・SRは林原社。採用文献は2報
((1)Sadakiyoら2017、(2)Isidaら2017)。
・D125、D256と同じ立て付け。届出表示において
D125にはあり、D256にはなかった「血糖値が上
がりやすい方」が復活。この対象の層別解析で結果を
導いているので、この文言を届出表示に入れるのは
当然と思われる。
・文献(1)から2試験((1)-1,(1)-2)を採用し、(1)-1は
イソマルトデキストリン8.08g+マルトデキストリンを
46.8gを、(1)-2はイソマルトデキストリン8.08g+
ショ糖100gを単回摂取。
文献(2)はイソマルトデキストリン2.13g+グルコース50g
を単回摂取。(1)-1では血糖値(変化量)70mg/dL以上、
(1)-2では血糖値(変化量)75mg/dL以上、(1)では
Cmax(変化量)上位1/2以上(いずれもプラセボ摂取時、
食後何分後かは不明)の層別解析で有意差があることから、
“食後血糖値が上がりやすい方”を導く。
・上記のように、3試験で層別解析の基準が異なっており、
チャレンジングな層別解析。
■食後中性脂肪
・SRは林原社+オクトエル社。
採用文献は1報(Takagaki2018)。
・採用研究:被験者は空腹時TG 81.2±26.7 mg/dLの健常者40名。
プラセボ摂取時のCmaxが200mg/dL以上となる被験者14名を
括り出し、食後4H後のTGに関し群間有意差を導く。
・こちらの層別解析もチャレンジング。
(2)E5
*限りなくアトピーに近いムズムズ感
A.商品名:アカポリ肌ケア
B.届出者:株式会社アカシアの樹
(旧社名:株式会社mimozax)
C.関与成分:アカシア樹皮由来プロアントシアニジン
D.届出表示:
本品には、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンが
含まれるので、肌(顔)の乾燥による不快感(ムズムズ感)
がある成人において、肌(顔)の乾燥を緩和して肌(顔)
の潤いを守るのを助け、肌(顔)の保湿力(バリア機能)
を守る機能があり、不快感を改善する機能があります。
肌(顔)の乾燥が気になる方、肌(顔)の乾燥による
不快感(ムズムズ感)がある方に適した食品です。
E.コメント:
■関与成分量は245mg/日。
C151.D219に続くアカポリシリーズ第3弾。
C151.D219は食後血糖値で関与成分量は163mg/日だった。
■RCT。ダブルブラインドパラレル。8w。N66。
客観評価で群間有意差が得られたのは8wの蒸散量値のみ(TEWL)。
主観評価として、
(A)Skindex-16 score、
(B)DLQI(Dermatology Life Quality Index)、
(C)VAS(desire to scratch=かゆみ感)を採用。
(A)は結果出ず。
(B)で群間有意差が見られたのは、symptom/feelingの
総括的評価(4w)。
かゆみ・ひりひり・痛み・チクチク感
(itchy, sore, painful, stinging。4w)
回復感(treatment。4w)。
(C)も4wで群間有意差あり。
被験者は肌にむずむず感のある人を集め、
TARC<450pg/mL IgE <170 IU/mLを採用。
■以上からすると、
(1)届出表示中の「肌(顔)の乾燥による不快感
(ムズムズ感)がある成人において」は被験者募集基準から
導き、
(2)「肌(顔)の乾燥を緩和して肌(顔)の潤いを
守るのを助け、肌(顔)の保湿力(バリア機能)を守る
機能があり」は蒸散量から導き、
(3)「(乾燥による)不快感を改善する」は上記の(B)(C)から
導いていることになる。
■これまでこの手の届出表示はアトピーの暗示等の理由で
厳しく判断されて来たが、その割には、本件はその点の
説明はV-2にはなく、様式Iの評価の欄に「血液検査に
おいてアトピー性皮膚炎ではなくアレルギー体質でも
ないヒトを対象とした」との記述があるだけで、
緩和された感がある。
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