景品表示法(景表法)とは?景品のルールや罰則、ステマ規制について解説
更新日2024/4/21
広告や販売を展開する事業者にとって「景表法」は必ずおさえておきたい法律です。No.1表記や口コミ、エビデンスが不十分な場合は景表法に抵触している可能性があり、この知識がなく作成されている広告も見受けられます。また、2023年10月からのステルスマーケティングにおける規制についても頭を悩まされている事業者も少なくありません。
本記事では、景表法はどのような法律なのか、違反事例をもとに詳しく解説していきます。また、法律である以上「知らなかった」では済まされないため、事業者がやっておくべき景表法対策もお伝えしますのでぜひ最後まで読み進めてください。
1.景品表示法(景表法)とは?
景品表示法(景表法)とは正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、過大な景品の提供や消費者に対する不当な広告を規制する法律です。
過大な景品類の提供や、「商品」「サービスの品質」「内容」「価格」等の偽った表示を厳しく規制することによって、一般消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選択できる環境を守り、利益を保護することを目的としています。
例えば「国産うなぎ」と謳い販売しているものが、実は安い「中国産うなぎ」を販売している場合などが不当な広告に当てはまります。一般消費者はうなぎを見ても、国産であるかどうかの見分けはほぼつきません。商品が売れるよう、品質や内容を偽って表示をしているため、自主的かつ合理的な選択が阻害されている一例です。
また「通常価格10,000円の商品がキャンペーン価格で2,000円!」という広告を見ると、「8,000円引きならお得だ」と思う人が多いかもしれません。しかし、実は10,000円での販売実績がなく、いつも2,000円で販売されているケースなども当てはまります。
商店やスーパーなどは、価格やサービスを良くし常に競争を行なっています。景表法は、この競争が公正なものであるためのルールを守る法律でもあるのです。
それでは次項におきまして、具体的にどのような行為が景表法違反に該当するのかを見ていきましょう。
2.不当表示の禁止
広告での虚偽の表示は、消費者に不利益をもたらすことが懸念されます。
広告で、実際の商品よりも品質や価格が優れていると過大に表現すると、消費者は合理的な選択ができません。
そのため景表法では、消費者を守るために不当表示が禁止されています。
不当表示とは、消費者をだます虚偽の表示や、誤認させる表示のことです。これには以下の3つがあります。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- 指定告示
こちらは次から解説していきます。
優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格、その他の内容が実際のものや競合他社のものよりも著しく優良と見せかける不当な表示のことです。
「景品表示法第5条1号」により事業者が一般消費者に対し
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であり、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。
例えば、ダイエット効果の確たるエビデンスがないにもかかわらず「飲むだけでスリムを叶える」などという表現で販売しているケースが当てはまります。
実際に、消費者庁から優良誤認表示違反として措置命令を受けた事例を紹介します。
参考例:キリンビバレッジ株式会社:「トロピカーナ」メロン果汁2%でも「100%」表記
「トロピカーナ100%まるごと果実感メロンテイスト」には、メロン果汁が約2%しか入っていないにもかかわらず、パッケージには「100% メロンテイスト」などと記され、ほぼメロン果汁であるような表示をし、優良誤認表示違反として措置命令を受けました。
なお、故意に優良であると表示するだけでなく、誤って表示してしまったとしても、優良誤認表示に該当する場合は景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。
有利誤認表示
有利誤認とは、商品やサービスの価格等の「取引条件」が、実際のものや競合他社のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される不当な表示のことです。
「景品表示法第5条第2号」により事業者が一般消費者に対し
(1)実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
(2)競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
であり、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。
例えば、ある商品について「メーカー希望小売価格の5割引き」と表示していたものが、実際はメーカー希望小売価格自体が架空のもので、当該商品の価格を有利に見せかけて販売するケースなどが有利誤認表示に当てはまります。
実際に有利誤認表示違反で措置命令を受けた事例を紹介します。
参考例:アディーレ法律事務所:1ヵ月限定キャンペーンと宣伝し、約5年間同サービスを表示
アディーレ法律事務所は、1ヵ月限定のキャンペーンと謳い「過払い金返還の着手金(約4万円)が無料」になると表示していました。しかし、実際は1ヵ月を超えた後も繰り返しサービスを提供し、その期間は2010年10月~2015年8月までと約5年間にもおよび、有利誤認表示違反で措置命令を受けました。
なお、故意に有利であると表示するだけでなく、誤って表示してしまったとしても、有利誤認表示に該当する場合は景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。
指定告示
指定告示は、サービスや商品の取引に関する内容について、消費者が誤認するおそれがあると認められた、「内閣総理大臣が指定する表示」です。景品表示法5条3項に該当します。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
ステルスマーケティング(ステマ)に関しては景品表示法第 5 条 3 項の規定に基づき、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示」(以下、「指定告示」という。)について指定を行い、指定告示の運用基準を策定しました。
実際に景品表示法違反(おとり広告)で措置命令を受けた事例を紹介します。
参考例:スシロー:うにを提供しないのに、提供するかのような広告を続ける
スシローは2021年9月8日から9月20日までの間に実施したキャンペーン内において、自社サイトにて「新物!濃厚うに包み100円(税込110円)」、「9月8日 (水)~9月20日(月・祝)まで!売切御免!」などと自社サイトなどで告知していました。しかし実際は、当該キャンペーンの実施期間中に在庫が不足する可能性を懸念し、9月13日に、翌14日~17日までの間うにの提供の停止を決定。多くの店舗で終日提供が行なわれていませんでしたが、それにもかかわらず、依然としてうにの提供を行なっているかのように広告していました。消費者庁はこれを景表法違反の「おとり広告」として措置命令を下しました。
3.景品類の制限及び禁止
景品類の制限及び禁止とは、過剰な景品やサービスを規制することです。
本来、販売者が消費者に対し景品を提供すること自体は規制の対象ではありません。問題なのは、過剰な景品の提供によって消費者を誘引することです。消費者はその景品に当惑し、合理的な判断ができずに商品を購入してしまう可能性があります。
この章では、景表法における景品類のそれぞれのルールや制限額について「共同懸賞」「一般懸賞」「総付景品」に分けて解説していきます。
景品類とは?
まずは、そもそも景品類とはどのようなものかについて説明します。
景表法における景品類は、同法の第2条第3項で定義されているものです。そこには、以下のように定められています。
- 顧客を誘引するための⼿段として
- 事業者が⾃⼰の供給する商品⼜は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
- 取引の相⼿⽅に提供する物品、⾦銭その他の経済上の利益 であって、内閣総理⼤⾂が指定するものをいう
引用:景品類とは(消費者庁)
具体的には、以下のような内容のものが該当します。
- 金銭、金券、商品券類など
- 物品および土地、建物など
- もてなしや接待(映画やスポーツ、旅行、演劇をはじめとする催物への招待や優待などを含む)
- 便益や労務など
「共同懸賞」と「一般懸賞」
前述した景品類のなかで、懸賞と呼ばれるものがあります。
懸賞とは、くじやビンゴなどで当選するなどしてその偶然性によって提供される景品や、クイズや競技で優劣または正誤により提供される景品のことです。
この懸賞は、「一般懸賞」「共同懸賞」の2つに分けることができます。
一定の条件のなかで複数の事業者がともに行うものが「共同懸賞」、それ以外の懸賞が「一般懸賞」です。
共同懸賞
一定の地域の小売業者やサービス業者、一つの商店街にある店舗など、複数の事業者の相当多数が集まって行なう懸賞を共同懸賞といいます。
共同懸賞として実施するには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 一定の地域における小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合
- 一の商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合(ただし、中元、年末等の時期において、年3回を限度とし、かつ、年間通算して70日の期間内で行う場合に限られます。)
- 一定の地域において一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合
なお、上記の条件を満たしていたとしても、懸賞への参加資格を限定したり、懸賞の実施について一部の者に対して過剰に負担を強いて懸賞に参加できないようしたりする場合は、共同懸賞として実施することはできません。
共同懸賞では、提供する景品類の最高額と総額が設定されています。具体的には以下のとおりです。
- 景品の最高額:30万円まで
- 景品の総額:取引総額予定の3%まで
一般懸賞
一般懸賞でも、提供する景品類の最高額と総額が決まっています。景品の最高額は、取引の価格により以下のように異なります。
消費者庁の
- 5,000円未満の取引価格:取引価格の20倍
- 5,000円以上の取引価格:10万円
いずれも総額は、懸賞にかかわる売上予定総額の2%が限度です。
総付景品
総付景品とは、上述した懸賞の定義に沿っていなくとも提供される景品のことです。購入者に景品を提供するケースや、商品を購入しなくても入店者に景品を提供するケースが該当します。
総付景品でも、提供する景品類の最高額が定められています。
- 1,000円未満の取引価格:200円
- 1,000円以上の取引価格:取引価格の10分の2
なお、特定の種類の事業については別途制限が決まっています。詳細は消費者庁のサイトにてご確認ください。
4.景品表示法に関するガイドライン
消費者庁より、景品表示法の規制や運用基準等が公開されていますので以下に一例を紹介します。
景品類等の指定の告示の運用基準について
「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
上記以外にも様々なガイドラインが消費者庁のウェブサイト「景品表示法関係ガイドライン等」にまとめられていますので、一度確認してみましょう。
5.景品表示法に違反した場合の罰則
景表法違反が認定されると、消費者庁や都道府県から「措置命令」や「課徴金命令」が下されます。この2つの罰則について解説していきます。
措置命令
措置命令とは、景表法に違反した事業者に、消費者庁または都道府県が当該広告や表示を停止させ、謝罪広告を命じるものです。
措置命令において、事業者には罰金などはありません。
しかし、広告は停止するだけで済みますが、違法な内容が印字された商品パッケージや商品は回収し、新たなパッケージを使用して出荷しなければなりません。それに加えて、措置命令はマスコミに取り上げられるため、事業者は大きなダメージを受けることになるでしょう。
課徴金納付命令
課徴金納付命令とは、景表法の規制のでも「優良誤認表示」、または「有利誤認表示」に抵触した事業者に課されるものです。3年間を対象期間の上限とし、課徴金額は対象商品などの売上額に3%を乗じた額となります(課徴金額が150万円に満たない場合、命令は執行されません)。
課徴金納付命令はお金を払えば済むのではなく、措置命令と同じように公表されます。
ただし、事業者が自主的に違反事実の報告を行なった場合は、超過金が1/2に減額されます。また、課徴金額が150万円に満たない場合や、相当な注意をしていた場合は免除されます。
過去の例では、日本マクドナルド株式会社の「東京ローストビーフバーガー」の広告や、株式会社TSUTAYAの「動画見放題プラン」などの広告が課徴金納付命令を受けました。
6.2023年10月からステルスマーケティングは景品表示法違反
2023年10月からステルスマーケティング(ステマ)について法規制が導入されました。
これによって、ステルスマーケティングは景表法の不当表示規制の対象となり、違反すると措置命令などが下されることになります。
この規制は、一般消費者に「一般の人の口コミや感想がいいから購入しよう」などと誤認させることを防ぎ、消費者が商品やサービスを合理的に選択できる環境を守ることを目的としています。
この章では、ステルスマーケティングの内容、誰が責任を負うのか、またアフィリエイターへの注意事項についてまとめました。
ステルスマーケティングとは
ステルスマーケティング(ステマ)とは、実際は広告であるのに広告だとわからないように、広告元の事業者とは無関係の人間を装って口コミや感想を投稿し、商品やサービスを消費者に紹介することをいいます。
具体的には、事業者自らが第三者としてなりすますほか、事業者が芸能人やインフルエンサー、一般消費者に利益を提供し、自社商品を「購入品」と偽り、SNSなどで好印象を与えるように紹介してもらうことなどが該当します。
責任を負うのは依頼者
アフィリエイターやインスタグラマーに依頼し、広告であることを表記していない場合や虚偽・誇大な表現をしている場合、依頼者、つまり広告主である事業者が責任を負います。実際に投稿を行なったアフィリエイターやインスタグラマー自身は、規制の対象にはなりません。
また、ステマ規制は2023年10月から施行されましたが、ネット上に掲載され続けている9月30日以前の投稿も規制対象になります。
アフィリエイターへの「広告」「PR」表記の徹底
アフィリエイターへ広告を依頼する場合には、「これは広告である」ということがわかるように「広告」や「PR」などの記載を徹底してもらうことが必要です。
また、一般消費者に広告であることを認識されやすくするため、以下のことも必要です。
- 「広告」「PR」などは、アフィリエイト広告掲載箇所、サイトのファーストビューなど、目立つところに表記
- 事業者の依頼による表示であることが一般消費者にもわかりやすい文言の使用
口コミやレビューも対象
ステマ規制では、対価を提供し、あたかも自主的に、かつ好意的な口コミやレビューをECサイトや口コミサイトなどへ第三者に投稿してもらうことも規制の対象になる可能性があります。「高評価のレビューを書いてくれたら〇〇をプレゼント」などと依頼をするケースがその一例です。
7.事業者がやっておくべき景表法対策
事業者が景表法違反で措置命令を受けたときに「広告に違反する内容とは知らなかった」「期間限定キャンペーンを続けて行なうことが違反だと知らなかった」というコメントが見られることがあります。
しかし「知らなかった」「大丈夫だと思っていた」では、法律は許してくれません。
そこで事業者がやっておくべき景表法対策を以下にまとめました。
<社内に景品表示法責任者を置く>
- 景表法の資格を持った者を社内責任者とする
- 社内でわからないときに聞ける窓口を用意する
<社内で景表法マニュアルの共有をする>
- 社内で起こりうる景表法違反をまとめたマニュアルを作成する
- または外部に委託し作ってもらうことも視野にいれる。お金はかかるが措置命令などのリスクが軽減するため致命的なダメージを防げる
<表示などの根拠となる情報の確認、共有の徹底>
- 景表法マニュアルは、社内全体で共有する
- いざ問題が起きたときに「このように対処していた」といえる体制を作っておく
<アフィリエイター対応を行なう>
- アフィリエイターやインスタグラマーにルールマニュアルの共有をする
- 該当する過去記事があるが連絡の取れないアフィリエイター向けに、サイトでルールを公開する
過去のアフィリエイト記事やSNSの投稿で、景表法違反となる記事を見つけても投稿者本人でないと修正や削除ができない場合が多いものです。連絡が取れて修正できればいいのですが、連絡が取れない場合は記事がそのまま残ってしまう可能性が高いでしょう。
自社サイトで「アフィリエイター様へ 投稿の注意事項を必ずご覧ください」という形で載せ、対策をしておくのも方法の一つです。
8.まとめ
景表法は広告の表記について、多くのルールを設けています。そのどれもが、消費者が商品やサービスを購入する際に、自主的かつ合理的な選択が行なえるようにするためです。
景表法に抵触した場合、措置命令などが下され、少なからず企業イメージに影響する可能性があります。
また、2023年10月以降ステルスマーケティングにおいても景表法での規制が始まりました。これは過去の投稿も規制の対象となり、違反が発覚した場合は罰則を受けることになります。
法律で決められた以上「これくらいは大丈夫だろう」という甘い見通しは、通用しなくなりました。景表法の重要性を再確認し、消費者から信頼のおける事業者となるよう、十分な知識と運用が求められます。
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パートナー弁護士 西脇威夫
一橋大学法学部卒。元ナイキ・インハウスロイヤー、エンターテインメント・ローヤーズ・ネットワーク会員、日本スポーツ法学会会員 他。
法人の設立、商業取引(英文及び和文の各種契約の作成・レビュー、ブランド保護、偽物対策、独禁法のアドバイス等)、人事労務、コンプライアンスについて、経験豊富。
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