こんにちは。YDCのミッシーです。
届出に関するご相談を受ける中でよくあるのが、
作用機序を表示文言の中に取り込みたいという
ものです。その中でもポピュラーなものの一つ
に「抗酸化作用」があります。データベースで
調べてみたところ、現在、抗酸化作用という言
葉を表示文言に使用している事例は299件ありま
した。抗酸化作用が、表示しようとする機能性
の主体として認められた事例は未だないため、
この299件は作用機序としての利用という事にな
ります。基本的には、「抗酸化作用を持つ〇〇
成分は・・・」「〇〇成分は抗酸化作用によ
り・・・」といった表現になります。
現在の機能性表示食品の手引きには、作用機序
に関して次のようにあります。
「科学的根拠に基づく機能性を消費者に正しく
伝えるために作用機序を表示することが必要な
場合は、この欄に作用機序を含めて記載したも
のを表示することができる。 なお、表示しよう
とする機能性に作用機序を含める場合、ヒトに
おける作用機序について出典を明記の上、in
vitro 試験又はin vivo 試験により作用機序を
評価した場合のヒトへの外挿性について説明す
ることも含め別紙様式(V)-18 で科学的に説
明する必要がある。また、表示しようとする機
能性に作用機序を含める場合、その作用機序が
あたかも科学的根拠に基づく機能性の表示であ
ると消費者に誤認を与えるような表示をしては
ならない。」
ここで注目したいのは、「消費者に正しく伝え
るために」という点です。この点から考えると、
抗酸化作用の作用機序には少し不思議な点があ
ります。いくつか例を見ていきましょう。
L95 記憶ハイチャージS
「本品にはエルゴチオネインが含まれます。抗
酸化作用をもつエルゴチオネインは継続的な摂
取により、中高年の方の認知機能の一部である
記憶力(人や物の名前などを記憶し、後から呼び
起こす能力)及び注意力(物事に対して注意を集
中して持続させる能力)を維持する機能があるこ
とが報告されています。」
K294 元気充電ポリフェ
「本品には黒大豆ポリフェノールが含まれます。
抗酸化作用を持つ黒大豆ポリフェノールには日
常生活により生じる一過性の疲労感を軽減する
機能があることが報告されています」
まず、K294ですが、この作用機序の構造は簡単
に言うと、(A)成分→抗酸化、(B)成分→疲
労感というヒト試験のエビデンスがあり、(A)
と(B)を推論で橋渡ししているというもの。1
対1の対応関係になっており、作用機序の記載の
仕方としてはシンプルなものです。
その一方でL95は、神経新生作用、神経障害保護
作用、認知機能速度、抗酸化作用の4つを作用機
序として挙げています。この中で抗酸化作用に
ついては、K294と同じく(A)成分→抗酸化、
(B)成分→記憶力および注意力の維持として、
(A)と(B)を推論で架橋するという構造。こ
れをもって、抗酸化作用をもつエルゴチオネイ
ン、という表現が成立しています。
しかし、抗酸化作用以外の機序についてはどう
なっているのでしょうか。作用機序資料の記述
上、上記の4つの作用は並列的に配置され、どれ
が主か、といった限定はありません。しかも、
「これらの作用が複合的に働くことで」ともさ
れています。そういう状況において、「抗酸化
作用」を表示文言に組み入れて、あたかも主と
なる作用であるかのように記載することは、
「正しく伝える」ことなのか、という疑問が生
じます。
とはいえ、実際上、これは問題とはされていま
せん。それは299件の抗酸化作用の受理事例が示
していますし、例に挙げたような構造をしてい
る事例も、そこにはたくさん含まれます。だか
ら安心して使って良い、というのは言い過ぎで、
突き詰めて考えると表示文言を支えるエビデン
スの信頼性に一抹の不安を残してしまうことに
は、注意するべきではないでしょうか。
ちなみに、だったら作用機序に記載する作用を
抗酸化作用の一つに絞ればよいのではないか、
と考える人もいるかもしれません。もしかする
と、299事例の中にはあえて作用機序を抗酸化作
用に一本化して見せているものがある可能性も
あります。ただ、そういったやり方は、科学的
に正しいのか、という別の問題につながること
になります。
それでは、またメールしますね。
