歯ブラシ広告のOK/NG表現を薬機法に基づいて徹底解説
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歯ブラシ広告のOK/NG表現を薬機法に基づいて徹底解説

更新日:2026年3月31日

オーラルケア市場において、ホワイトニングや歯周病ケアへの関心が高まる中、歯ブラシの広告制作はかつてないほど繊細なバランス感覚が求められています。「高機能な製品だからこそ、その効果をストレートに伝えたい」というマーケティング担当者の想いと、法規制という目に見えない壁の板挟みにあっている方も少なくないでしょう。

本記事では、歯ブラシ広告を制作する上で避けて通れない薬機法の注意点と、実務で活用できる具体的な表現のポイントについて解説します。単に「何がダメか」を解説するだけでなく、コンプライアンスを遵守しながらいかにして商品の魅力を伝えるか、その具体的な手法を整理しました。

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1.歯ブラシの製品分類は雑貨(雑品)

歯ブラシは、薬機法で定義されている医薬品や医療機器などのいずれの区分にも該当しないため、法律上は雑貨(雑品)として扱われます。これが歯ブラシ広告における大前提となりますが、雑貨だからといって何を言ってもいいわけではありません。

雑貨であれば薬機法は関係ないと考えがちですが、ここに注意が必要です。
雑貨であるにもかかわらず、身体の構造や機能に影響を及ぼすような効果効能をうたった場合、その製品は「未承認の医薬品」あるいは「未承認の医療機器」とみなされるためです。つまり、本来の区分を超えた広告表現を行うことで、結果的に薬機法の規制対象となってしまいます。

実際、東京都の行政資料においても、歯ブラシは健康・美容雑貨の代表例の一つとして位置づけられており、本来の雑貨区分を超えた広告表現が薬機法上問題となり得ることが示されています。意図せずとも「効きそう」に見せてしまう表現が、大きな経営リスクを招く可能性があることを忘れてはいけません。リスクを回避するためにも、まずは法律の基本ルールから確認していきましょう。

参考:「雑貨等の広告について(薬事該当性)」東京都保健医療局健康安全部 薬務課監視指導担当

薬機法とは

薬機法とは、医薬品や医療機器などの品質、有効性、安全性を確保し、保健衛生上の危害を防止することを目的とした法律です。この法律は製品の製造・販売だけでなく、広告表現についても厳格な制限を設けています。

特に実務で注視すべきは、第66条(虚偽・誇大広告の禁止)と第68条(承認前の医薬品・医療機器等の広告禁止)の2点です。たとえば、歯ブラシに対して「虫歯を治す」といった表現を用いた場合、第66条違反による課徴金(違反期間中の売上の4.5%相当)や刑事罰、あるいは第68条違反による刑事罰の対象となる可能性があります。

広告表現は、消費者が受け取る印象によって判断されます。「開発者の意図」や「商品説明のつもりだった」という言い訳は行政には通用しません。最新の法改正や行政の判断基準を常にキャッチアップしておくことが、現代のマーケターには不可欠です。

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2.歯ブラシ広告でやってはいけないNG表現

歯ブラシ広告において、なぜ特定の表現がNGとされるのか。その理由は、それが「雑貨」の範囲を超え、歯科医師による医療行為や、承認を受けた医療機器の領域に侵入しているからです。
ここでは代表的な3つのNGパターンを解説します。

①「ホワイトニング」「歯を白くする」などの漂白表現

消費者のニーズが非常に高いホワイトニング訴求ですが、歯ブラシ単体の広告で「ホワイトニング」や「歯を白くする」といった表現を使うのは極めて危険です。なぜなら、これらの言葉は歯そのものの色を化学的に変化させる(漂白)というニュアンスを含んでいるからです。

歯の色を本来の色以上に白く変化させる、あるいは着色をブリーチングするような表現は、医薬品や歯科医院での医療行為、あるいは薬用歯磨き粉(医薬部外品)の一部にのみ許される表現です。雑貨である歯ブラシでこれらをうたうと、事実に反する過大広告、あるいは未承認の効能標ぼうとみなされます。

②「虫歯が治る」「歯周病を撃退」などの治療・予防表現

「虫歯が治る」は言わずもがな即アウトですが、見落としがちなのが「予防」という言葉の扱いです。特定の疾病(虫歯や歯周病など)を直接的に「予防する」「撃退する」という表現は、身体への作用が認められた医薬品等にのみ許された特権です。

現場のリアリティとして、「予防のために使ってほしい」という想いはあるでしょう。しかし、製品そのものが病気を防ぐという直接的なロジックを立てることは、薬機法違反に直結します。
基本的には「汚れを落とすことで、結果的に口腔環境を整える」という文脈が安全ですが、「汚れを取り除くことで、虫歯や歯周病を予防する」といった、物理的な除去と結果の因果関係を明示した表現であれば、一般論として認められています。
一方で、汚れの除去に触れず、製品自体の効能として直接「虫歯を予防できる」と断言する表現は、未承認の効能標ぼうとみなされるため注意が必要です。

③「歯石を除去する」という医療行為に踏み込む表現

「歯垢(プラーク)の除去」と「歯石の除去」は、法律上全く別物として扱われます。歯垢は日々のブラッシングで取り除くことが可能ですが、石灰化した歯石は歯科医師が専用の器具を用いて除去する医療行為の領域です。

実際、医療機器の分類には歯石除去器という項目が存在します。そのため、雑貨である歯ブラシが「歯石を除去する」とうたうことは、医療機器の承認を受けていない製品が医療機器としての効果を標ぼうしているとみなされます
「取れにくい汚れ」を「歯石」と表現してしまうケアレスミスが、行政指導の引き金になるケースは少なくありません。

3.訴求力を落とさない!歯ブラシ広告のOK表現

歯ブラシ広告のOK・NG表現

厳しい制約がある中で、いかにして消費者に製品の魅力を届けるか。その鍵は物理的効果と一般論の賢い使い分けにあります。

「ブラッシング効果」の範囲内で訴求を最大化する

歯ブラシに認められている唯一にして最強の根拠は「磨くこと(ブラッシング)による物理的な変化」です。
本来は化粧品(歯みがき類)に対する規定ですが、一つの目安として化粧品の効能効果56項目を参考にすると、ブラッシングを伴うことで「歯垢を除去する」「歯のやにを取る」「歯石の沈着を防ぐ」といった表現は、物理的な機能(ブラッシング効果)として説明が可能です。あくまで雑貨としての範囲内での参考指標ではありますが、実務上は有効なガイドラインとなります。

ポイントは「この歯ブラシに含まれる特殊成分が〜」とするのではなく、「この形状・ブラシ密度によって、効率的に汚れを掻き出す(物理的に除去する)」というロジックを徹底することです。落とすことにフォーカスすれば、法的なリスクを抑えつつ、製品の洗浄力の高さを十分にアピールできます。

「一般論」と製品情報を切り分けて伝える

大手メーカーの広告事例などでも見られる手法ですが、「製品自体の効果」と「口腔ケアに関する一般論」を切り離して構成するテクニックがあります。

たとえば、記事やLPの前半で「歯垢を放置すると虫歯などのトラブルの原因になります。毎日のケアが重要です」という口腔保健の一般論を述べます。その後に、「当社の歯ブラシは、この独自の毛先形状で歯垢をしっかり除去します」と繋げる手法です。
一般論をフックに読者の悩みや危機感を醸成し、その解決手段(汚れを落とす道具)として製品を提示する流れであれば、法に触れずに「虫歯対策」という文脈を持たせることが可能です。

使用感や体験にフォーカスして感情を動かす

機能での差別化が難しい場合、ユーザーの感覚や体験にフォーカスした訴求が効果的です。「磨き上がりのツルツル感」「お口の奥までスッキリ」「自信のある笑顔へ」といった表現は、身体への具体的な変化を保証するものではなく、使用後の満足感や気分を伝えるものとして、薬事的なハードルが低くなります。

情緒的な価値を伝えることで、機能説明だけでは埋もれてしまう製品の個性を際立たせ、消費者の購買意欲を刺激することができます。

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薬事法ドットコムでは、過去600社以上の実績を持つ専門家と、弁護士による2段階チェックにより、媒体や行政の最新動向を踏まえた、「売れる&通せる」最適な代替表現をご提案。単なるNG指摘ではなく、文脈に合わせた最適な表現へ導きます。


広告が通らなかった場合も、審査通過まで責任を持って徹底サポート。必要に応じて弁護士名義の見解文書も無償で作成し、ビジネスの完遂を最後まで支えます。

4.電動歯ブラシや歯間ブラシの広告表現における境界線

デバイスの特性によっても、注意すべき境界線は微妙に異なります。

電動歯ブラシ:手磨き以上の効果(歯石除去など)を期待させる表現の限界

電動歯ブラシの広告では、「毎分〇万回の振動」といったスペックを「手磨きより強力に歯石まで落とせる」といった誤解を招く表現に結びつけてしまいがちです。しかし、どれほど振動数が多くとも、雑貨である以上は歯石の除去までは言えません。

「手磨きでは届きにくい場所の汚れを、微細な振動で効率的に浮かせて落とす」というように、あくまで手磨きを物理的に補助・効率化するツールとしての立ち位置を崩さないことが、安全な広告制作の鉄則です。

歯間ブラシ:狭い部位の清掃ゆえに言及したくなる歯周病予防の適切な扱い

歯間ブラシは歯茎へのアプローチが強調されやすいため、つい「歯ぐきの腫れを抑える」「歯周病を防ぐ」と書きたくなります。しかし、前述の通り直接的な予防表現はNGです。

ここでは「歯間に残った歯垢(プラーク)は、歯周トラブルの大きな原因です」といった一般論を賢く使い、「届きにくい隙間までしっかり清掃し、清潔な状態を維持する」という、衛生維持の観点での訴求に留めるのがプロの判断です。

5.薬機法違反となった場合のリスクと罰則

薬機法違反した場合のリスク 行政処分・刑事罰・課徴金・信頼失墜

薬機法に違反した場合、単なる修正では済まされません。2021年8月からは課徴金制度も導入され、違反の代償はさらに大きくなっています。

リスク区分内容具体例・影響
行政処分措置命令、業務停止命令など・広告の差し止め
・製品の販売中止
・一時的な広告活動の停止
刑事罰懲役または罰金
(違反内容による)
・虚偽・誇大広告、未承認医薬品等の広告:2年以下の懲役または200万円以下の罰金
・無許可販売:3年以下の懲役または300万円以下の罰金※法人にも両罰規定あり
課徴金売上額の4.5%・虚偽・誇大広告により得た売上に対して適用
・大規模事業者ほど経済的打撃が深刻

法的な罰則に加え、違反による社会的信用の失墜も重大なリスクです。報道やSNSでの拡散によるブランド毀損、消費者の離反、取引先からの信用喪失や契約停止といった長期的な影響が現実に起こり得ます

薬機法違反は「知らなかった」では済まされません。近年ではSNSやECサイトでの個人販売も監視対象となっており、事業規模に関わらず法令遵守が求められています。広告表現の段階から法令リスクを意識し、事前の対策を徹底しましょう

6.違反を防ぐための対策

薬機法違反のリスクを回避するには、広告制作プロセスにおけるチェック体制の整備が欠かせません。企業によっては「法務部門が最終確認を行っているから大丈夫」と考えがちですが、制作段階でのチェック漏れが原因で修正対応に追われるケースもあります。初期の企画段階から薬機法を意識した運用体制を築くことが重要です。

以下のような対策を実践することで、違反リスクを抑えることができます。

  • 制作部門と法務部門の連携強化
    商品特性や訴求内容に応じて、事前に表現の方向性をすり合わせておくことで、修正の手間を減らせます。
  • 薬機法に関する社内ガイドラインの整備
    OK/NG表現例、使用可能な効能効果一覧、チェックフローなどをマニュアル化し、関係者が共通認識を持てるようにします。
  • 第三者による表現チェックの導入
    広告代理店やデザイナー任せではなく、法律の専門知識を持った担当者または外部コンサルによる確認体制を導入することで、客観的な判断が可能になります。
  • 制作フローにチェックリストを組み込む
    「医薬品的表現になっていないか」「効果を保証する文言が含まれていないか」など、最低限確認すべきポイントを明文化しておくことで、誰でも初期段階で確認できる仕組みができます。

このように、「誰が」「いつ」「どこで」チェックするかをあらかじめ設計しておくことが、トラブルを未然に防ぐポイントです。

専門家・薬機法コンサルへの依頼

広告表現のチェック体制を社内だけで完結させるのが難しい場合は、薬機法に精通した外部の専門家やコンサルティングサービスの活用も有効です。

薬機法における表現判断は、単に法律を知っていればよいというものではなく、行政の運用実務や過去の指摘事例への理解が不可欠です。また、近年では景表法・ステマ規制・健康増進法など、複数の法令が広告に関わってくるため、総合的な観点でのチェックが求められます。

その点、弁護士が関与する薬機法コンサルティングサービスを活用すれば、表現に関する法令上の適否を含めたチェックを客観的に受けられるほか、社内運用体制やガイドライン整備、社員教育の支援も可能になります。
これは、制作現場の負担軽減とコンプライアンス強化を両立する手段として非常に有効です。

なお、薬事法ドットコムでは、薬機法に特化した広告表現コンサルティングサービスを提供しています。
1998年のサービス開始以来、D2C・EC企業や広告代理店をはじめとする多くのクライアントに対して、薬機法違反を防ぎつつ、広告効果を最大化する表現提案を行ってきました。

提携弁護士による法的観点のチェックと、実務に精通したコンサルタントによる媒体・行政事情を踏まえた代替表現の提案を組み合わせることで、リスクを抑えながらも訴求力のある広告制作を支援しています。

また、広告原稿のチェックにとどまらず、表現ガイドラインの策定や見解書の作成、行政対応の助言まで幅広く対応可能です。
薬機法対応に不安を感じる企業様は、ぜひ私たちにご相談ください。

7.まとめ

歯ブラシは身近な雑貨ですが、その広告は薬機法という厳格なルールの上に成り立っています。
「ホワイトニング」や「歯石除去」といった安易なキーワードに頼るのではなく、ブラッシング効果を軸とした論理的な訴求や、一般論を活用した戦略的なコピーライティングこそが、長期的なブランドの成長を支えます。

法律を「規制」と捉えるか、ユーザーとの「誠実な約束」と捉えるか。その姿勢の差が、広告の信頼性、ひいては企業の持続可能性を左右するのです。コンプライアンスを武器に変え、正しく、そして力強く製品の魅力を届けていきましょう。

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この記事の監修を担当した弁護士

西脇 威夫

薬事法ドットコム
パートナー弁護士 西脇威夫

一橋大学法学部卒。元ナイキ・インハウスロイヤー、エンターテインメント・ローヤーズ・ネットワーク会員、日本スポーツ法学会会員 他。
法人の設立、商業取引(英文及び和文の各種契約の作成・レビュー、ブランド保護、偽物対策、独禁法のアドバイス等)、人事労務、コンプライアンスについて、経験豊富。

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