ステルスマーケティング(ステマ)とは?規制内容や事例、違反しないためのポイントを解説
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ステルスマーケティング(ステマ)とは?規制内容や事例、違反しないためのポイントを解説

更新日:2025年10月31日

ステルスマーケティング(ステマ)は、景品表示法によって規制されている行為です。どういった行為がステマに該当するかを正しく理解していないと、企業イメージの悪化を招いたり、何らかの法的措置を受けたりする可能性があります。

本記事では、ステマの基礎知識を踏まえつつ、違法性や炎上事例、景品表示法に基づく規制や違反しないためのポイントについて解説します。ステマへの理解を深めるため、ぜひご一読ください。

1.ステルスマーケティング(ステマ)とは?

ステルスマーケティングとは、消費者に広告であることを隠しつつ、商品・サービスを宣伝する行為です。一般的に「ステマ」と呼ばれます。

ステルスマーケティング(以下、ステマと表記)は2023年(令和5年)10月1日以降、景品表示法における違反行為となりました。これは、ステマが横行した場合、消費者側だけではなく、商品・サービスを提供する企業側にも影響する可能性があるためです。

違反が発覚した場合、措置命令や社名公表などのペナルティ、また措置命令に従わない場合は、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金を科せられる可能性があるため、事業者は十分に注意しなければなりません。

ステマが増えた社会的背景

近年、X(旧Twitter)やInstagramといったSNSの普及により、個人の情報発信が強い影響力を持つようになりました。さらに、インフルエンサーマーケティングが台頭したことで、個人と企業の境界線が曖昧になっている状況です。

そのなかで、消費者は企業が発信する広告よりも個人が発信する「リアルな声」に信頼を置くようになり、いわゆる“宣伝臭”がする広告を避けるようになりました。より自然にアプローチできる広告を打つ必要性が企業に生じた結果、ステマが増えたと考えられます。

また、ステマに対する法規制が追いついていなかったことも、ステマの増加に影響しているのでしょう。

2.ステマの手法は2種類

ステマにはさまざまな手法がありますが、大きく分けると「なりすまし型」「利益提供秘匿型」の2種類です。前者は関係者が直接ステマに関与する手法、後者は第三者にステマを依頼する手法という違いがあります。

なりすまし型

なりすまし型は、企業や広告代理店などの関係者が一般消費者になりすまし、商品・サービスを評価する手法です。

例えば、以下のような行為が該当します。

  • 自社を褒め称える肯定的な口コミを投稿する
  • 他社を貶める否定的な口コミを投稿する
  • 関係者が一般消費者を装い、自社をSNSやブログで他者に勧める

なりすまし型は、発信者が本当に一般消費者かどうかわからず、WebサイトやSNSを見ても判断がつきにくいという点を悪用した手法です。一般消費者がリアルな意見を述べたような体裁で発信するため、ほかの消費者から共感を得やすく、購入や契約につながりやすいといわれています。

利益提供秘匿型

利益提供秘匿型は、企業や広告代理店から第三者に報酬を提供したうえで、その事実を隠して宣伝などを行なう手法です。

例えば、以下のような行為が該当します。

  • インフルエンサーが報酬を得ていると明示せず、特定の商品・サービスを宣伝する
  • インフルエンサーが特定の商品・サービスを無料で提供され、自身のSNSやブログでその魅力を紹介するが、広告の表記がない

大きな影響力を持つ第三者による宣伝や口コミは、マーケティングの手段として効果的です。しかし、報酬が発生した広告であることを明かさないまま宣伝することは、消費者を裏切る行為です。このような手法は、発信者の生の声とはいえず、ステマに該当します。

3.ステマは違法!なぜ悪い?

ステマが悪いものとされる理由は、「法律で規制されているから」というだけではありません。消費者の判断や企業の信頼性に対する影響、ステマが発覚した際のリスクも踏まえて、避けるべき行為とされています。

景品表示法違反としての法的位置づけ

ステマは2023年(令和5年)10月1日より、景品表示法第5条第3号に基づき、規制対象に加わっています。

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第五条第三号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和五年十月一日から施行する。


一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示


事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの


引用元:令和5年3月28日内閣府告示第19号|消費者庁

この中の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」がステマに該当します。これを簡潔に説明すると「広告かどうか消費者が見分けられないもの」です。景品表示法第5条の「優良誤認表示」「有利誤認表示」と同じく、消費者の適切な商品選択を妨げる行為として法律で禁止されています。

消費者判断への影響

企業が発信した広告コンテンツを見た消費者は、ある程度の誇張が含まれていると捉えるのが一般的です。例えば、「○年に一度の傑作」「過去に類を見ない○○」といった表現を文面通りに受け取る人は多くないでしょう。

しかし、これが一般消費者による口コミとなると、話は変わります。
先述のとおり、消費者は企業の広告よりも第三者の口コミや評価を信頼する傾向があるため、「誇張のない信頼に足る情報」だと考える可能性があります。結果的に、消費者は正しい情報に基づいて商品・サービスを選択できなくなるでしょう。

ステマの規制は、消費者が自分の意思や合理的な判断基準に基づき、適切な商品・サービスを選択できる環境を保護することにつながります。

企業の信頼性への深刻な影響と炎上リスク

ステマが発覚すると、対象の商品・サービスだけではなく、提供する企業の信頼が損なわれる可能性があります。さらに、SNSを通じて急速に情報が拡散し、関係者や消費者を巻き込んで炎上に発展することは珍しくありません。

ステマによる炎上騒ぎが発生すれば、企業の信頼性やイメージは大きく損なわれます。企業にとって社会的評価の低下は、法的制裁以上のダメージになりかねません。また、ステマに関連のないメディアや商品に悪影響がおよぶこともあるでしょう。

一度失った消費者の信頼を取り戻すことは、非常に困難です。業界全体のイメージ低下につながるおそれもあるため、ステマによる炎上は絶対に避けなければなりません。

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4.ステマによる炎上事例

企業がステマを行なった結果、インターネット上で炎上騒ぎに発展したケースは少なくありません。実際に起こった炎上事例の原因や経緯、炎上後に企業が講じた対策などを学ぶことも、ステマの理解促進につながります。

ディズニー映画に関する投稿でPR明記不足

2019年12月3日、大人気映画の続編『アナと雪の女王2』の公開に合わせ、あるPR企画が実施されました。この企画は、依頼を受けた7人のクリエイターが映画の感想を漫画にして、Twitter(現X)に投稿するというものです。しかし、一斉に投稿された7作品すべてに、広告であることを示す「PR」の表記がありませんでした。

さらに、投稿時間がほぼ同時刻で、同じハッシュタグ(「#アナ雪2と未知の旅へ」「#アナと雪の女王2」)が使われていたことなどから、多くのTwitterユーザーが「ステマではないか」と不審に思ったのです。
この指摘が相次ぐと、漫画家たちは一様にPR企画であったことを認め、説明不足を謝罪しました。これらの一連の出来事により、ステマ疑惑は大きな炎上騒ぎへと発展し、依頼元であるウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社が公式サイト上に謝罪文を掲載する事態に至りました。

ペニーオークション詐欺事件

2012年、オークションサイトの一つである「ペニーオークション」でステマによる詐欺事件が発生しました。同サイトは入札ごとに手数料がかかるシステムを採用していましたが、架空のアカウントで再入札を繰り返して落札を防ぎ、結果的に手数料をだまし取っていたことが判明したものです。

同サイトでは、企業から報酬を受け取った複数の芸能人によるステマも行なわれていました。芸能人が自分のブログで広告表示を隠しつつ、実際に入札していない同サイトの商品を「安く落札できた」などと紹介していたのです。

ステマに加担した各芸能人は謝罪しましたが、ブログ削除や活動自粛に追い込まれたり、億単位の違約金が発生したりするなど、多大な影響が出ています。

食べログでやらせ業者が高評価を投稿

有名グルメサイト「食べログ」に掲載されている飲食店が業者に報酬を支払い、高評価の口コミ投稿を依頼していた事例です。いわゆる「やらせ行為」ですが、同サイトの口コミはユーザーの主要な判断基準であるため、大きな問題となりました。

また、同サイト内のランキングの一部が広告枠で運用され、金額によって順位が左右されていたことも発覚しています。

ステマ発覚後、食べログでは不自然な口コミを取り除く仕組みが導入されたほか、ランキングの広告枠が広告だと判別できるように表示するルールが設けられました。

アナウンサーによるステマ疑惑

某テレビ局のアナウンサーが美容室や系列店でサービスを無料で受け、その対価にSNSで店舗を宣伝した事例です。計8名のアナウンサーが関与し、ステマ疑惑として話題になりました。

テレビ局側は就業規則違反の事実を認めた一方、ステマには該当しないと発表しています。アナウンサーもSNSで謝罪したものの、疑惑は払拭できず、イメージダウンにつながりました。

5.景品表示法によるステマ規制とは

ここからは景品表示法で定められたルールをもとに、ステマ規制について詳しく解説します。

ステマ規制の対象者

ステマ規制は「不当な表示の決定に関与した事業者(広告主)」に適用されます。つまり、事業者の依頼により広告・宣伝をしたインフルエンサー等は対象外です。

ただし、事業者と提携して商品・サービスを提供しているインフルエンサー等は、規制の対象となります。

ステマ規制の対象となる表示・対象とならない表示

一般的な見地から事業者の依頼による広告や宣伝だとわからないものには、ステマ規制が適用されます。例えば、消費者に認識できないほど短時間しか表示しない場合や、部分的にしか示していない場合などが挙げられます。

一方、事業者がインフルエンサー等の第三者に広告・宣伝を依頼した場合でも、規制の対象とならないケースがあります。客観的な状況を鑑みて、第三者の自主的な意思による表示だと認められると、ステマ規制が適用されません。また、消費者から見て事業者の表示が明瞭なもの、社会通念上明らかなものについても対象外です。

ステマ規制に違反した場合の処分

ステマ規制の違反が認められた場合、消費者庁によって「措置命令(行政処分)」が発出される可能性があります。措置命令を出された場合、当該事業者には以下の内容が求められます。

  • 消費者への誤認の排除
  • 再発防止策の実施
  • 同様の違反行為の禁止

違反が発覚すると、上記に加えて事業者名が公表される可能性があります。公表された場合、ステマを行なった事実が世間に知れ渡るため、企業イメージの低下や炎上は避けられません。

また、違反の事実が認められなかったとしても、違反のおそれがある行為が発覚した場合、消費者庁による行政指導が行なわれます。

事業者が措置命令に従わない場合は、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。法的なペナルティを受けるだけではなく、信頼も失われるため、ステマをしないように対策が必要です。

ステマ規制に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。

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6.ステマをしないために!気をつけたい4つのポイント

ステマは意図せず発生したものだとしても、違反行為になります。ステマを避けるためには、広告表示を明確にしたり、投稿前のチェック体制を整備したりするなど、予防的な観点から対策を講じることが大切です。

事業者による表示であることを明確にする

プロモーション情報を発信する場合、必ず投稿内容が広告だと示す「広告」「宣伝」「PR」といった文言を表示しましょう。あるいは「A社から商品の提供によって投稿しています」など、説明用の文章を表示します。

SNS投稿に関しては、上記の代わりに「#タイアップ」「#モニター」といったハッシュタグを使って明確にする方法もあります。

選択した方法にかかわらず、広告表示は消費者が見落とさない視認性の高い場所に置くことが大切です。また、誇張・誇大表現を使わないように注意しましょう。

社員・従業員にステマに関する研修を実施する

ステマを未然に防ぐためには、社員・従業員に対する教育が欠かせません。個人的なSNS投稿などがステマに該当し、トラブルを引き起こす可能性があるためです。

定期的に研修を実施すれば、社内のステマに対する理解度を高めることができます。書籍や参考資料を配布して自主学習を促したり、研修の代わりに社外セミナーへの参加を指示したりするのも一案です。

また、情報の取り扱い・発信について一定のルールを設けることで、なりすまし型ステマの発生を防げるようになります。

投稿内容を事前にチェックする仕組みをつくる

投稿内容に問題がないかチェックする仕組みをつくることで、表現のミスや広告表示の漏れを防ぎやすくなるため、ステマ防止に効果的です。

景品表示法に詳しい専門家に協力を仰ぐと、よりスムーズにチェック項目の内容や数を調整できるため、必要に応じて依頼しましょう。

また、景品表示法には優良誤認表示と有利誤認表示の規制もあります。ステマ規制と同じく、違反時はペナルティを科せられるため、事前によく確認しておきたいポイントです。

今後の法改正に備えるためにも、常に最新の情報を取得しましょう。

インフルエンサー等の投稿もチェックする

インフルエンサー等と提携している場合、投稿内容をチェックし、ステマに該当しないか把握しておきましょう。問題が見つかった場合は速やかに連絡し、修正や削除などを依頼します。

また、第三者を起用する場合は、契約条件にステマの関連事項を追加しておくことも大切です。

7.まとめ

SNSの普及や口コミマーケティングなどの重要性向上により、あらゆる業界でステマが増加していますが、れっきとした違反行為です。

ステマが発覚すると、企業イメージや商品・サービスの評価が低下したり、SNSを中心に大きな炎上騒ぎが起こったりする可能性があります。企業の信頼性も著しく低下するおそれがあるため、ステマに関する正しい知識を身に付けて対策を講じましょう。

景品表示法によって規制されたステマは、「なりすまし型」と「利益提供秘匿型」の2種類に大別され、消費者の適切な商品選択を妨げる行為として法律で禁止されています。ひとたびステマが発覚すれば、企業は措置命令や社名公表といった行政処分を受ける可能性があります。さらに、措置命令に従わない場合には、懲役や罰金といった罰則が科されます。また、事例で紹介したように、ステマが発覚することで、社会的評価の低下という深刻なダメージを負うことになりかねません。

ステマを未然に防ぐためには、プロモーションであることの明確な表示はもちろん、社員・従業員への研修や投稿内容の事前チェック体制の整備が不可欠です。これらの対策を徹底して消費者との信頼関係を築き、健全なマーケティング活動を継続していきましょう。

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この記事の監修を担当した弁護士

西脇 威夫

薬事法ドットコム
パートナー弁護士 西脇威夫

一橋大学法学部卒。元ナイキ・インハウスロイヤー、エンターテインメント・ローヤーズ・ネットワーク会員、日本スポーツ法学会会員 他。
法人の設立、商業取引(英文及び和文の各種契約の作成・レビュー、ブランド保護、偽物対策、独禁法のアドバイス等)、人事労務、コンプライアンスについて、経験豊富。

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