プレゼント企画は景品表示法の規制対象!気を付けるべきポイントを解説!
更新日:2024年11月26日
プレゼント企画は、景品表示法の規制対象となることをご存知でしょうか。
近年、企業が景品表示法の詳細を十分理解せずに実施したプレゼント企画が、措置命令や行政指導を受けるケースが続出しています。
本記事では、景品表示法の規制対象となるプレゼント企画の、景品の種類や上限額、違反事例などを具体的に解説。景品表示法を遵守したプレゼント企画のポイントなども紹介しますので、企業のマーケティング担当者や販売促進活動に携わる方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.景品表示法(景表法)とは?
景品表示法(景表法)は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」と呼ばれ、消費者が景品類の過大なうたい文句などに惑わされることなく、自主的、かつ合理的に商品やサービスを選択できるようにするための法律です。
ここでは、景品表示法の目的や、景品類の該当条件について解説します。
景品表示法の目的
景品表示法の目的は、大きく2つに分けられます。
- 実際よりも良く見せる虚偽や誇大な広告表示から消費者を守ること
- 消費者が過大な景品類の提供につられ、質の良くないものを購入して不利益を被るのを防ぐこと
国は景品表示法により、消費者が正しい情報に基づいて商品やサービスを選択できる環境を整えています。
景品類の該当条件
以下の3つの条件をすべて満たした場合、景品表示法で規制される「景品類」に該当します。
- 顧客を誘引する手段として用いられること
- 商品やサービスの取引に付随して提供されること(取引付随性)
- 物品、金銭、その他の経済上の利益であること
ただし、値引きやアフターサービスなどは景品類には含まれません。
景品表示法の規制内容や罰則などについては、下記の記事で詳しく紹介しておりますので、こちらも合わせてご確認ください。
2.プレゼント企画は景品表示法の規制対象になる?
多くの企業で実施されているプレゼント企画の大半は、景品表示法の規制対象になります。なぜなら、顧客を呼び込むためにプレゼントを配ることは景品表示法において「景品類」として規制されているためです。
例えば、「クローズド懸賞」と呼ばれる商品の購入者向けの抽選プレゼントや、来店者やサイトアクセス者へノベルティグッズを提供するなどのプレゼント企画が、景品表示法の規制対象になります。
規制対象となるプレゼントには、金額や提供方法に関する制限が設けられているため、企画の際には慎重に設定しましょう。
一方、「オープン懸賞」と呼ばれる商品の購入やお店へ来店をしなくても参加できるプレゼント企画は、景品表示法の規制対象にはなりません。
企業がプレゼント企画を実施する際には、自社の企画内容が景品表示法の規制対象に該当するかを確認し、該当する場合は規制内容を十分に理解して遵守することが求められます。
次章では、クローズド懸賞とオープン懸賞の違いについて詳しく解説します。
3.オープン懸賞とクローズド懸賞の違い
オープン懸賞とクローズド懸賞の違いは「懸賞形式」と「規制対象になるかどうか」にあります。オープン懸賞は景品表示法の規制対象外ですが、クローズド懸賞は規制の対象です。
企業は、マーケティングの目的や取引付随性に応じて、これらの懸賞方法を適切に使い分けましょう。
ここからは、オープン懸賞とクローズド懸賞について、さらに詳しく解説していきます。
オープン懸賞
オープン懸賞は、取引付随性を前提としない懸賞のことで、景品表示法における景品規制の対象ではありません。商品の購入やサービスの利用が応募条件になっておらず、誰でも自由に参加できるため「オープン」と呼ばれます。
オープン懸賞の例
- 応募した方の中から抽選で10名様にプレゼント(雑誌などに掲載されている懸賞)
- 創立50周年記念!抽選で5名様に世界一周旅行プレゼント(ウェブサイトや街中の広告などに掲載されている懸賞)
クローズド懸賞
一方、クローズド懸賞は取引付随性を前提とする懸賞のことで、景品表示法における景品規制の対象です。商品の購入やサービスの利用が応募条件となっている場合が多く、参加者が限定されるため「クローズド」と呼ばれます。
クローズド懸賞は一般懸賞、共同懸賞、総付景品の3つに分けられ、提供できる景品類の上限金額等が定められているため、景品の選定には注意が必要です。
次章では景品類の種類と上限金額について詳しく解説します。
4.景品類の種類と上限金額
前章で述べた通り、景品表示法では、景品類を「一般懸賞」、「共同懸賞」、「総付景品」の3つに分け、それぞれに異なる上限金額を設定しています。これは、公正な競争と消費者の利益を保護することが目的です。
ここでは、各景品類の特徴と具体例、上限金額について詳しく解説します。
一般懸賞
くじなどの偶然性や特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といい、共同懸賞以外のものは「一般懸賞」と呼ばれます。
例えば、商品やサービスの購入者を対象に、抽選やクイズなどで当選者を決定して景品を提供する形式が一般懸賞です。身近な例として、ペットボトル飲料のキャップ裏に当選番号が書かれているキャンペーンや、レシート番号で当選が決まる抽選会などがあります。
一般懸賞は、消費者の購買意欲を高める効果的な販促手法として広く利用されています。
一般懸賞の上限額
一般懸賞の上限額は以下のとおりです。
取引価額 | 最高額 | 総額 |
---|---|---|
5,000円未満 | 取引価額の20倍 | キャンペーンの売上予定総額の2% |
5,000円以上 | 10万円 |
例えば、500円の商品購入で応募できる懸賞の場合、景品の最高額は1万円(500円×20倍)となります。
共同懸賞
複数の事業者が共同で実施する懸賞を「共同懸賞」と呼びます。
例えば、ショッピングモールの各店舗が協力して行なう大抽選会や、一定の地域で複数のメーカーが共同で実施する大規模なキャンペーンなどが該当します。複数の事業者が参加するため、金額や規模が一般懸賞と比べて大きくなるのが特徴です。
ただし、共同懸賞の実施期間には制限があり、中元や年末などの時期において年3回を限度とし、年間通算で70日以内に行なう必要があります。
共同懸賞の上限額
共同懸賞の上限額は以下のとおりです。
取引価額 | 最高額 | 総額 |
---|---|---|
制限なし | 30万円 | キャンペーンの売上予定総額の3% |
例えば、ショッピングモール全体で実施する大規模な抽選会では、取引価額にかかわらず30万円が最高額となり、キャンペーンの売上予定総額の3%以下にする必要があります。
総付景品
総付景品とは、商品やサービスの購入・利用者全員に必ず提供される景品のことです。来店者やサイトアクセス者を対象とする場合も含まれます。
具体的には、ファストフード店でセットメニューを注文すると必ずもらえるおもちゃや、雑誌の付録、商品購入時に必ずもらえるポイントなどが該当します。
総付景品には、いつもはその商品を買わない顧客にも購入を促すメリットがあります。
総付景品の上限額
総付景品の上限額は以下のとおりです。
取引価額 | 最高額 |
---|---|
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引価額の10分の2 |
例えば、800円の商品に付くおまけは200円まで、2,000円の商品に付くおまけは400円までとなります。
なお、来店者やサイトアクセス者の取引額は100円と考えられており、景品の最高額は200円です。
5.景品表示法に違反するプレゼントの具体例
景品表示法においては、一般懸賞、共同懸賞、総付景品のそれぞれに対して厳格な規制が設けられており、これらに違反するプレゼント企画は法的問題を引き起こす可能性があります。
景品表示法違反となるプレゼントの具体例を一般懸賞、共同懸賞、総付景品ごとに紹介するので、プレゼント企画を検討している方は参考にしてください。
一般懸賞の違反例
- ケース1:3,000円の商品を購入した人を対象に、抽選で5名に15万円相当のハイエンドスマートフォンをプレゼントする企画
違反理由:取引価格の20倍を大幅に超えるため違法 - ケース2:5万円の商品に対して抽選で1名に15万円の旅行券をプレゼントする企画
違反理由:景品の上限額である10万円を超えているため違法
共同懸賞の違反例
- ケース1:ショッピングモールで2,000円以上の商品を購入した人を対象に、年間を通じて毎月抽選で1名に50万円の賞金を提供する企画
違反理由:実施期間の制限に違反するため違法 - ケース2:小規模な商店街で1万円の商品購入者に対して、抽選で3名に40万円の海外旅行をプレゼントするキャンペーン企画
違反理由:キャンペーンでの売上総額が1,000万円とすると上限(3%=30万円)を超える景品を提供しているため違法
総付景品の違反例
- ケース:3,000円の商品購入者全員に800円相当のオリジナルグッズをプレゼントする企画
違反理由:取引価格に対して提供される景品の価値が10分の2を超えるため違法
6.景品表示法違反の影響と罰則
景品表示法に違反すると、企業は多岐にわたる重大な影響や罰則を受ける可能性があるため、本項ではその具体的な内容を説明します。企画担当者の皆様は内容を十分に踏まえ、法令を遵守した正しい施策を心がけてください。
措置命令や課徴金の納付命令がなされる
まず、行政処分として措置命令や課徴金納付命令が下される可能性があります。
措置命令は、違反行為の差止めや再発防止策の実施、さらには違反事実の公表などを命じるものです。企業は違反行為の是正だけでなく、その事実を公に認めることを求められます。
また、課徴金納付命令が出される場合もあります。課徴金対象の行為を行なった場合、対象売上が5,000万円未満などの例外に該当しない限り、課徴金の納付が命じられます。課徴金額は、課徴金対象行為にかかわる商品・サービスの売上額に3%を乗じた金額です。
刑事罰を受ける可能性もある
景品表示法に違反し、その後の措置命令に従わない場合、責任者は「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」、法人に対しては「3億円以下の罰金」といった刑事罰が科される可能性があります。
社会的信用を失う
景品表示法違反が公になると、消費者の信頼を大きく損なうリスクがあります。
例えば、過大な景品提供や誤解を招く表示が明るみに出た場合、企業の誠実性や商品の品質に対する疑念が生じ、ブランドイメージが著しく低下する可能性が高まります。
さらに、SNSの普及により、こうした情報は瞬時に拡散され、企業の評判に長期的な影響を及ぼしかねません。特に、上場企業であれば、景品表示法違反による信用失墜は株価にも影響を与えるリスクも伴います。
7.景品表示法を遵守したプレゼント企画のポイント
企業が景品表示法を遵守したプレゼント企画を行なうために、押さえておきたいポイントを2つ紹介します。
法令を確認する
プレゼント企画を実施する前に、景品表示法の内容をしっかりと確認することが大切です。
消費者庁が制定している景品表示法に関するガイドラインには、提供できる景品の価値や種類、提供方法について細かい規定があるため、これらの規定を正確に理解して違反しないような企画を設計しましょう。
社内での意識を高める
景品表示法を遵守することは、企画担当者だけでなく会社全体で取り組むべき課題です。
定期的な社内研修やセミナーを開催し、景品表示法に関する知識を全社員で共有することで景品表示法への理解が高まるでしょう。また、プレゼント企画の承認プロセスを明確化し、法務部門や外部の専門家によるチェック体制を整えることで、より確実なコンプライアンスを実現できます。
さらに、過去の違反事例や他社の取り組みから学ぶことで、実践的な知識を蓄積していきましょう。
8.まとめ
プレゼント企画は企業にとって有効なマーケティング手法ですが、同時に景品表示法の遵守が求められます。
万が一、景品表示法に違反すると、罰則を受けるだけでなく、企業の信用にも大きな打撃を与える可能性があります。そのため、法令の適切な確認や社内体制の強化は、リスクを回避しつつ効果的なプレゼント企画を実現するために不可欠です。
自社のプレゼント企画が法的に適切であるかを再確認し、必要な対策を講じていきましょう。
この記事の監修を担当した弁護士
薬事法ドットコム
パートナー弁護士 西脇威夫
一橋大学法学部卒。元ナイキ・インハウスロイヤー、エンターテインメント・ローヤーズ・ネットワーク会員、日本スポーツ法学会会員 他。
法人の設立、商業取引(英文及び和文の各種契約の作成・レビュー、ブランド保護、偽物対策、独禁法のアドバイス等)、人事労務、コンプライアンスについて、経験豊富。
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