株式会社Historia 令和6年3月22日

  • 投稿カテゴリー:訪問販売

Ⅰ概要

①処分対象事業者

株式会社Historia

②業界

ビジネススクール

③特定商取引法に違反する行為

(1)勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的不明示)(特定商取引法第3条)

(2)役務の効果につき不実のことを告げる行為(特定商取引法第6条第1項)

(3)勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘(特定商取引法第6条第4項)

(4)訪問販売に係る役務提供契約の解除について迷惑を覚えさせる仕方で妨げる行為(特定商取引法第7条第1項第5号の規定に基づく特定商取引に関する法律施行規則第7条第1号)

Ⅱ業務停止命令及び指示の内容

①対象となる事業概要

株式会社Historia(以下「Historia」という。)は、Historiaの営業所等以外の場所である、Historiaが勧誘行為の実施を委託する者(再委託や再々委託等により委託先の者が更に勧誘行為の実施を委託する者を含む。以下「本件委託先」という。)の営業員(以下「営業員」という。)の自宅において、Historiaが運営する「ENTRE PLACE Academy」と称するビジネススクールに係る役務(ブックメーカーでの賭け方に関するブックメーカーノウハウを含む。以下「本件役務」という。)を有償で提供する契約(以下「本件役務提供契約」という。)を締結して本件役務を提供していることから、Historiaが行う本件役務の提供は、消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律(令和3年法律第72号)による改正前の特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「旧法」という。)第2条第1項に規定する訪問販売(以下「旧法に規定する訪問販売」という。)及び特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「特定商取引法」という。)第2条第1項に規定する訪問販売(以下単に「訪問販売」という。)に該当する。

②処分の内容

1.業務停止命令

Historiaは、令和6年3月22日から令和6年9月21日までの間、訪問販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。

ア Historiaが行う訪問販売に関する役務提供契約の締結について勧誘すること。

イ Historiaが行う訪問販売に関する役務提供契約の申込みを受けること。

ウ Historiaが行う訪問販売に関する役務提供契約を締結すること。

2. 指示

ア Historiaは、旧法第3条に規定する勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的不明示)、旧法第6条第1項及び特定商取引法第6条第1項の規定により禁止される役務の効果につき不実のことを告げる行為、旧法第6条第4項の規定により禁止される勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘並びに旧法第7条第1項第5号の規定に基づく特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(令和4年内閣府・経済産業省令第1号)による改正前の特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号。以下「旧々施行規則」という。)第7条第1号に該当する訪問販売に係る役務提供契約の解除について迷惑を覚えさせる仕方で妨げる行為をした。かかる行為は、旧法及び特定商取引法に違反し、又は旧法に規定する指示対象行為に該当するものであることから、Historiaは、当該行為の発生原因について、調査分析の上検証し、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築し、これをHistoriaの役員及び本件委託先に、前記(1)の業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。

イ Historiaは、旧法に規定する訪問販売及び訪問販売により、本件役務提供契約を締結しているところ、令和2年2月8日から令和6年3月21日までの間にHistoriaとの間で本件役務提供契約を締結した全ての相手方(以下「契約の相手方」という。)に対し、以下の(ア)から(ウ)までの事項を、消費者庁のウェブサイト(https://www.caa.go.jp/)に掲載される、Historiaに対して前記(1)の業務停止命令及び本指示をした旨を公表する公表資料を添付して、令和6年4月22日までに文書により通知し、同日までにその通知結果について消費者庁長官宛てに文書(通知したことを証明するに足りる証票及び通知書面を添付すること。)により報告すること。 なお、令和6年4月3日までに、契約の相手方に発送する予定の通知文書の記載内容及び同封書類一式をあらかじめ消費者庁長官宛てに文書により報告し承認を得ること。

(ア)前記(1)の業務停止命令の内容

(イ)本指示の内容

(ウ)Historiaは、少なくとも令和2年2月から令和5年1月までの間に、本件役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、消費者に対して、本件役務の一部であるブックメーカーノウハウの効果の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、「しっかりブックメーカーとかでお金を運用して、一緒に払ったお金を回収していこうねっていう、大体1年だったりとかをめどにやってもらっていますよっていう感じです。」、「私は1年ぐらいかかった」、「110万の平均回収率が大体1年ぐらい、長くて1年半かかるっていう形です。」、「私はでも、平均的にその1年っていうところよりも、ちょっと早く8か月ぐらいで回収できた」、「絶対に負けないほうでやってるって感じ。仮にね、絶対に勝つっていう方法でやってて、99%勝ってても、1%負けてたら0になって意味がないんで。それさえ負けないってので。」、「絶対に負けることはないから、そのまま増えるだけ」などと、あたかも、本件役務の一部であるブックメーカーノウハウのとおりにブックメーカーで賭けをすることにより、受講料110万円の平均回収期間が1年程度であり、最長でも1年6か月程度で受講料110万円が回収できる又は賭けに負けることはないかのように告げるなど、不実のことを告げる行為をしたこと。

③処分の原因となる事実

Historiaは、以下のとおり、旧法及び特定商取引法に違反し、又は旧法に規定する指示対象行為に該当する行為をしており、消費者庁は、訪問販売に係る取引の公正及び役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。


(1)勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的不明示)(旧法第3条) Historiaは、少なくとも令和3年8月から令和4年3月までの間に、旧法に規定する訪問販売をしようとするとき、その勧誘に先立って、その相手方に対し、飲食店で会った際に、「そっか。ネトフリは何見るの。」、「えっ、じゃあ、韓ドラって、韓ドラは好きなの。」、「どんな人がタイプなの。」、「やっぱ安心できる人がいい。友達とかがさ、結婚とかさ。何歳で結婚したいとかある。」などと告げるのみで、本件役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨を明らかにしていなかった。

(2)役務の効果につき不実のことを告げる行為(旧法第6条第1項又は特定商取引法第6条第1項) Historiaは、少なくとも令和2年2月から令和5年1月までの間に、本件役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、消費者に対して、「しっかりブックメーカーとかでお金を運用して、一緒に払ったお金を回収していこうねっていう、大体1年だったりとかをめどにやってもらっていますよっていう感じです。」、「私は1年ぐらいかかった」、「110万の平均回収率が大体1年ぐらい、長くて1年半かかるっていう形です。」、「私はでも、平均的にその1年っていうところよりも、ちょっと早く8か月ぐらいで回収できた」、「絶対に負けないほうでやってるって感じ。仮にね、絶対に勝つっていう方法でやってて、99%勝ってても、1%負けてたら0になって意味がないんで。それさえ負けないってので。」、「絶対に負けることはないから、そのまま増えるだけ」などと、あたかも、本件役務の一部であるブックメーカーノウハウのとおりにブックメーカーで賭けをすることにより、受講料110万円の平均回収期間が1年程度であり、最長でも1年6か月程度で受講料110万円が回収できる又は賭けに負けることはないかのように告げた。 当該告げた事項について、特定商取引法第6条の2の規定に基づき、Historiaに対し、期間を定めて、その裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、Historiaは資料を提出した。しかし、当該資料はいずれも、当該告げた事項の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。 このため、特定商取引法第6条の2の規定により、当該告げた行為のうち、下記5の事例3については、特定商取引法第6条第1項第1号の規定に基づく特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(令和5年内閣府・経済産業省令第2号)による改正前の特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)第6条の2第5号に掲げる役務の効果につき不実のことを告げる行為を、また、下記5の事例4及び事例5については、旧法第6条第1項第1号の規定に基づく旧々施行規則第6条の2第5号に掲げる役務の効果につき不実のことを告げる行為をそれぞれしたものとみなされる。

(3)勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘(旧法第6条第4項) Historiaは、少なくとも令和2年9月、旧法に規定する訪問販売に係る役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、当該役務提供契約の締結について勧誘をするものであることを告げずに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下「SNS」という。)のメッセージ機能により、「カフェ行きましょう。今月で空いている日はありますか?」などと伝えて飲食店への来訪を誘引した者に対し、当該飲食店で会った後、営業員の自宅であるマンションの一室に誘い込んだ上で、当該役務提供契約の締結について勧誘をした。

(4)訪問販売に係る役務提供契約の解除について迷惑を覚えさせる仕方で妨げる行為(旧法第7条第1項第5号の規定に基づく旧々施行規則第7条第1号) Historiaは、少なくとも令和2年9月、旧法第9条第1項の規定に基づく役務提供契約の解除(以下「クーリング・オフ」という。)を複数回申し出た消費者に対し、約2時間もの間、SNSのメッセージ機能を使って、何度も執拗に、「一度俺と一緒に本気で頑張ってみようよ!絶対稼がせる自信あるから」、「昨日決断した事がこんなに簡単にやめるの?一緒に頑張るって言ったのに俺が居ないところで色々話して、周りから潰されるの?」、などと、クーリング・オフの行使を思い止まるように説得したり、「結局親から自立したいって言ってたのに、親の言いなりでいつまでも親のレールでやってても何も変わらないよ!いつまでも甘えてられないよ!●●歳なんだから自分で決めた事くらいやり通せないでどうするの?いつ抜け出すの?いつ実家から出るの?昨日言った言葉に責任もないの?」などと、消費者を非難したりすることにより、クーリング・オフの行使を妨害するなど、本件役務提供契約のクーリング・オフについて迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げた。

事例>>事例1~7