Ⅰ概要
①処分対象事業者
ITEC INTERNATIONAL株式会社
②業界
化粧品、水素生成器等
③特定商取引法に違反する行為
(1)勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的の不明示)(特定商取引法第33条の2及び第3条)
(2)連鎖販売業に関する事項であって、連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの及び訪問販売に係る売買契約に関する事項であって、購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき不実のことを告げる行為(特定商取引法第34条第1項及び第6条第1項)
(3)勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘(特定商取引法第34条第4項及び第6条第4項)
Ⅱ業務停止命令及び指示の内容
①対象となる事業概要
ITEC INTERNATIONAL株式会社(以下「アイテック」とい う。)は、「DDS マトリックスエキス」と称する化粧品(以下「本件商品①」 という。)、「DDS マトリックスブライトファンデ」と称する化粧品(以下 「本件商品②」という。)及び「DDS マトリックスエクソソーム」と称す るシリーズの化粧品(以下「本件商品③」という。以下、本件商品①から本件 商品③までを合わせて「本件商品」という。)等を販売する事業を行い、「奨励 金」と称する紹介料等を収受し得ることをもって、本件商品等の販売のあっせ んをする者(以下「会員」という。)を誘引し、その者と本件商品等の購入を 伴う本件商品等の販売に係る取引(以下「本件連鎖販売取引」という。)を行っ ている。
当該紹介料等は特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)第33条第1項に規定する特定利益に該当し、本件商品の購入は同項に規定する特定負担(以下「特定負担」という。)に該当することから、同社は同項に規定する連鎖販売業を行っている。
②処分の内容
1. 取引等停止命令
アイテックは、令和3年8月26日から令和4年2月25日までの間、連鎖販売業に係る次の取引等を停止すること。
ア アイテックが行う連鎖販売取引(特定商取引法第33条第1項に規定する連鎖販売取引をいう。以下同じ。)について勧誘を行い、又は同社が統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について勧誘を行わせる者(特定商取引法第33条の2に規定する勧誘者をいう。以下「勧誘者」という。)に勧誘を行わせること。
イ アイテックが行う連鎖販売取引についての契約の申込みを受け、又は勧誘者に当該取引に係る契約の申込みを受けさせること。
ウ アイテックが行う連鎖販売取引についての契約を締結すること。
2. 指示
ア 勧誘者は、特定商取引法第33条の2に規定する勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的の不明示)、同法第34条第1項の規定により禁止される連鎖販売業に関する事項であって、連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき不実のことを告げる行為及び同法第34条第4項の規定により禁止される勧誘目的を告げずに誘引した者に対して公衆の出入りする場所以外の場所において特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をしている。かかる行為は、特定商取引法の規定に違反するものであることから、当該行為の発生原因について、調査分析の上検証し、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築し、これらをアイテックの役員、従業員及び会員に、前記(1)の取引等停止命令に係る取引等を再開するまでに周知徹底すること。
イ アイテックは、本件連鎖販売取引についての契約(以下「本件連鎖販売 契約」という。)を締結しているところ、令和元年6月1日から令和3年 8月25日までの間に、本件連鎖販売契約を締結している全ての相手方 (以下「契約の相手方」という。)に対し、以下の事項を、消費者庁のウェ ブサイト(https://www.caa.go.jp/)に掲載され る、同社に対して前記(1)の取引等停止命令及び本指示をした旨を公表 する公表資料を添付して、令和3年9月27日までに文書により通知し、 同日までにその通知結果について消費者庁長官宛てに文書(通知したこ とを証明するに足りる証票及び通知文書を添付すること。)により報告す ること。
なお、令和3年9月8日までに、契約の相手方に発送する予定の通知文書の記載内容及び同封書類一式をあらかじめ消費者庁長官宛てに文書により報告し承認を得ること。(ア)前記(1)の取引等停止命令の内容(イ)本指示の内容(ウ)下記4(2)の違反行為の内容
③処分の原因となる事実
勧誘者は、以下のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、アイテックには、連鎖販売取引の公正及び連鎖販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。
(1)勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的の不明示)(特定商取引
法第33条の2)
勧誘者は、遅くとも令和元年11月以降、本件連鎖販売取引をしようとするとき、その勧誘に先立って、その相手方に対し、「ものすごくいい話があるのよ。」、「みんなが喜ぶいい話だからね。体がよくなったのなら、会おうよ。」などと告げるのみで、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨を明らかにしていない。
(2)連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき不実のことを告げる行為(特定商取引法第34条第1項)
勧誘者は、遅くとも令和元年6月以降、アイテックがその統括する一連の連鎖販売業に係る本件商品の販売のあっせんを店舗等によらないで行う個人を相手方として本件連鎖販売契約の締結について勧誘をするに際し、本件商品①及び本件商品②について、実際には、■■(注:化粧品の製造業者)の化粧品ブランドである▲▲の商品を製造する工場と同一の工場で、▲▲の商品の製造と同時期に製造していた事実がないにもかかわらず、「その工場で作っている化粧品の名前が▲▲化粧品って知ってますかね。はい、実は、この▲▲さんの化粧品も実はそこで作っています。」、「それが、実はこれらをどこで作ってるか。美容業界では知らない人はいません。▲▲の製造工場で作ってるんです。」、「実は、その▲▲の製造工場は山口さんの持ち物なんです。そして、販売の権利だけを■■化粧品が持ってるのです。その結果、■■化粧品は山口さんの製造工場に製造をお願いする関係上、山口さんはこれに限らず、色んな所から毎日のように不労所得であるお金が入ってき、なんと、その金額がだいたい1日2000万。」、「その▲▲のなんと製造工場が流通に詳しい方はすぐピンと来ると思います。なんと、孫請けなんです。流通で言うと。この孫請けに▲▲の製造工場があり、通常であれば、下請けとかメーカーとか、商社を介して、私達お客様へこう来ますけれども、この仲介を一切介さずに、孫請けから小売りまで飛ばしているんです。」などと、あたかも■■の化粧品ブランドである▲▲の商品を製造する工場と同一の工場で、▲▲の商品の製造と同時期に製造しているかのように告げ、また、本件商品③について、実際には、少なくともb大学及びc大学と共同研究を実施していた事実がないにもかかわらず、「エクソソームを塗ることによって。なので、そういうのがエクソソームなんですよ。そして、これがマトリックスとプラスするとさらに凄いのが、マトリックスは線維芽細胞を活性化って言ってましたね。」、「正にこれです。エクソソームと言われるものです。これがですね、世界で初めて発表するものですから、ほんとに凄いもの出てくると思ってください。そしてこれが研究してるところですよ。どこが研究してたか、共同研究、あの、技術の結集なんですよね。これ、今から8つの研究機関なんですけれども、言いますよ。a大です、これ、まず。そして、a大です。b大学です。そして、c大学です。c大ですね。そして、d大学。そして、e大学。そして、f大学、そして、えー、g大学。そして、h学会。この8つなんですよ。この8つの技術を結集したものがこれ、正にこん中に入っているやつです。なんで、すごい物が出てくるなと思ってください。ただ、なぜ、アイテックはそのように素晴らしい研究機関と色んなコラボレーションすることができるのか、っていうことなんですよ。それは、実は、山口オーナーという方に実は特徴があります。」、「実は山口オーナーという方はですね、実は、これから伸びそうであろうなと思うものを研究なさっている研究者です。そして、大学などにそのお金寄付しているんですよ。」などと、あたかもb大学及びc大学を含む大学等と共同研究を行って開発したものであるかのように告げている。
(3)勧誘目的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘(特定商取引法第34条第4項)
勧誘者は、遅くとも令和元年11月以降、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに、電話により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、当該契約の締結について勧誘をしている。
Ⅲ実例
【事例1】勧誘目的等の明示義務に違反する行為(勧誘目的の不明示及び勧誘目
的を告げずに誘引した者に対する公衆の出入りしない場所における勧誘)
令和元年11月下旬頃、勧誘者Zは、消費者Aに電話をかけ、Aに対し、「事故に遭ったって聞いていたけど、その後どうしているの。」などと告げた上で、「ものすごくいい話があるのよ。」、「みんなが喜ぶいい話だからね。」、「体がよくなったのなら、会おうよ。」などと告げた上で、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに、電話により、飲食店への来訪を要請して誘引した。令和元年11月下旬頃、Zは、当該飲食店でAと合流すると、AをZの自動車に乗せて、アイテック又は同社の会員と関係のない一般人が出入りすることがない場所である会員の仕事場である住宅様の建物に連れて行った。当該建物に到着すると、勧誘者Y及び勧誘者Xが、Aを出迎え、Yは、当 該建物内で、アイテックが行う事業に関するビデオ映像をAに視聴させた。 ここまでの時点で、Z、Y及びXは、Aに対し、特定負担を伴う取引につ いての契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げたことはなかっ た。 ビデオ映像の放映が終わると、Z、Y及びXは、当該建物内で、Aに対し、 「水素マルチポッド H2 MULTIPOD」と称する水素生成器を見せ、 当該水素生成器等を詰め合わせた商品のセットを購入し、毎月、一定額の仕 入れを継続すれば、アイテックの会員になれる旨及び同社が取り扱う商品を 安く購入できるようになる旨告げるとともに、「仕事をしていないんやし、 年金も少ないんやから。」、「ちょっとでもお金の足しにしたらええんやな いか。」などと告げた。
【事例2】連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき不実のことを告げる行為
アイテックが会員に対して実施する「講師認定試験」と称する試験に合格した認定講師(以下「認定講師」という。)である勧誘者Wは、令和元年6月15日、同社が愛知県に所在するセミナー会場で主催した本件連鎖販売契約の締結について勧誘するための新規事業説明会において、当該新規事業説明会の参加者に対し、本件商品③について、「そうすると、その状態で保湿をするんですよ、何も塗らなくても。エクソソームを塗ることによって。なので、そういうのがエクソソームなんですよ。そして、これがマトリックスとプラスするとさらに凄いのが、マトリックスは線維芽細胞を活性化って言ってましたね。」、「正にこれです。エクソソームと言われるものです。これがですね、世界で初めて発表するものですから、ほんとに凄いもの出てくると思ってください。そしてこれが研究してるところですよ。どこが研究してたか、共同研究、あの、技術の結集なんですよね。これ、今から8つの研究機関なんですけれども、言いますよ。a大です、これ、まず。そして、a大です。b大学です。そして、c大学です。c大ですね。そして、d大学。そして、e大学。そして、f大学、そして、えー、g大学。そして、h学会。この8つなんですよ。この8つの技術を結集したものがこれ、正にこん中に入っているやつです。なんで、すごい物が出てくるなと思ってください。ただ、なぜ、アイテックはそのように素晴らしい研究機関と色んなコラボレーションすることができるのか、っていうことなんですよ。それは、実は、山口オーナーという方に実は特徴があります。実は、普通の方じゃありません。はい、要はですね、僕も沢山の方とお会いしましたけども、オーナーみたいな方会ったの初めてなんですよ。リアルに、『もう、わし金いらねー。』っていう方でした。」、「山口オーナーはですね、二日に一回、一千万、チャリンチャリン入ってるらしいです。これ凄いですよ、一千万、バサバサのものをチャリンって言いますからね。なぜかと言うと、収入の一つにしか過ぎないからです、オーナーからすると。なので、何十億というお金を、キャッシュでポンポンと不動産だとかに動かしますから。凄いですよ。ただ、お金いらないって言っても、オーナーの元には入ってくるんですよ。ただ、お金というものは、出口が一番大事なんですよ。何に使うかです。実は山口オーナーという方はですね、実は、これから伸びそうであろうなと思うものを研究なさっている研究者です。そして、大学などにそのお金寄付しているんですよ。はい、そしてですね、そこで、大学っていうのは、実は研究費ってもの凄く補助額が削られているので、非常に困ってるんですよ。だから、そういう寄付って非常に助かるんですね。ただ、そこでまた新しいものができます。ただ、その新しいものは、そのお金を投じた方がその利権を持つんですよ。そして、また、新しいお金の循環なんですよね。これ、ほんとに生きたお金の循環をしているのが、実は山口オーナーのやり方なんですよ。」などと、あたかもb大学及びc大学を含む大学等と共同研究を行って開発したものであるかのように告げた。また、Wは、当該新規事業説明会の参加者に対し、本件商品①について、「その工場で作っている化粧品の名前が▲▲化粧品って知ってますかね。はい、実は、この▲▲さんの化粧品も実はそこで作っています。ただ、▲▲さんは、数年前に買収されたんですけれども、誰が買収したと思いますか。この流れで言うと。はい、アイテックの山口オーナーが実は買収してるんですよ。なので、実はですね、販売権と販売店舗、全く興味がないです、オーナーは。なので、全て■■化粧品に売却しています。欲しかったのは工場です。」などと、あたかも日本■■の化粧品ブランドである▲▲の商品を製造する工場と同一の工場で、▲▲の商品の製造と同時期に製造しているかのように告げた。
【事例3】連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
につき不実のことを告げる行為
認定講師である勧誘者Vは、令和元年6月19日、アイテックが福岡市に所在するセミナー会場で主催した新規事業説明会において、当該新規事業説明会の参加者に対し、本件商品②について、「それが、実はこれらをどこで作ってるか。美容業界では知らない人はいません。▲▲の製造工場で作ってるんです。」、「実は、その▲▲の製造工場は山口さんの持ち物なんです。そして、販売の権利だけを■■化粧品が持ってるのです。」、「その結果、■■化粧品は山口さんの製造工場に製造をお願いする関係上、山口さんはこれに限らず、色んな所から毎日のように不労所得であるお金が入ってき、なんと、その金額がだいたい1日2000万」、「その▲▲のなんと製造工場が流通に詳しい方はすぐピンと来ると思います。なんと、孫請けなんです。流通で言うと。この孫請けに▲▲の製造工場があり、通常であれば、下請けとかメーカーとか、商社を介して、私達お客様へこう来ますけれども、この仲介を一切介さずに、孫請けから小売りまで飛ばしているんです。」などと、あたかも■■の化粧品ブランドである▲▲の商品を製造する工場と同一の工場で、▲▲の商品の製造と同時期に製造しているかのように告げた。