【まとめ】医療広告ガイドラインに基づいたNG表現とOK表現
第3章 NG表現とOK表現
第2章で法規制の全体構造は掴めたと思いますが、これだけでは表現は作れません。もっとブレークダウンする必要があります。そこで、ガイドラインとQ&AでNGとされている表現とOKとされている表現を拾ってみることにしましょう。
1、前提
- 表現媒体 申し出に応じて送付するパンフレット等は非広告とされます。(ガイドラインP7)。→広告規制に縛られません。
- 外延
医療に関する内容でないものは特段制限されません(P34)。
たとえば-
- 背景等となる風景写真やイラスト等
- レイアウトに使用する幾何学模様等
- BGMとして放送される音楽、効果音等
- 広告制作者の名称、広告の作成日、写真の撮影日等
- 芸能人や著名人の映像写真等
2、医療法が定める13のアイテム
Ⅰ. 医師又は歯科医師である旨
Ⅱ. 診療科名
第4章 参照
Ⅲ. 病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに病院又は診療所の管理者の氏名
Ⅳ. 診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無
Ⅴ. 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合には、その旨
Ⅵ. 入院設備の有無、第7条第2項に規定する病床の種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数その他の当該病院又は診療所における施設、設備又は従業者に関する事項
Ⅶ. 当該病院又は診療所において診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他のこれらの者に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
Ⅷ. 患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項
Ⅸ. 紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項
Ⅹ. 診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、前条第3項に規定する書面の交付その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項
Ⅺ. 当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術その他の治療の方法については、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)
1)全体像
2)各論
2)-1.厚労省が定めたもの
厚労省が定めたものは次の5つです。
①保険診療
②評価療養及び選定療養
③分娩
④自由診療のうち、保険診療又は評価療養若しくは選定療養と同一の検査、手術その他の治療の方法
⑤自由診療のうち、薬事法の承認又は認証を得た医薬品又は医療機器を用いる検査、手術その他の治療の方法
2)-2.治療の方針
厚労省が定めるものの中には入っていませんが、ガイドラインP25には、成功率、治療率などの治療効果に触れなければ、治療の方針も広告可能としています。
例
1.術中迅速診断を行い、可能な限り温存手術を行います。・・・G.P25
2.手術療法の他に、いくつかの薬物療法の適用があるので、それぞれのメリットデメリットを御説明し、話し合いの下で治療方針を決定するようにしております。・・・G.P25
3.できる限り歯を削らず痛くない治療を目指します。・・・Q2-31
※NG例(Q2-31)
①できる限り歯を削らず痛くない治療を目指します(99%以上の満足度)
②痛くない治療を行います
2)-3.保険診療
「白内障の日帰り手術実施」のように形容詞をつけてもかまいません。
2)-4.自由診療
(1)自由診療に関して広告可能なパターンとしてガイドラインは2つのパターンを示しています。
(A)保険診療と同じことを違う目的で行う
ex.・顔のしみ取り
・イボ、ホクロの除去
・歯列矯正
(B)既承認の医薬品又は医薬機器を用いて保険診療にないことを行う
※尚、医薬品や医薬機器の名称は示してはいけないー薬事法上医療用医薬品・医療機器の広告が不可とされている(BtoBのみ可)こととの均衡によるー
ex.・内服の医薬品によるED治療(「バイアグラ」というワードはNG)
・眼科用レーザー角膜手術装置の使用による近視手術の実施(「レーシック」というワードはNG)
(2)(A)は問題は少ないですが、(B)はいろいろな問題を含んでいます。
(3)(B)より直ちに導かれること
①ドクターが個人輸入(ドクターズオーダー)した医薬品や医療機器を用いて行う治療を広告することはできません。
⇒「内服の医薬品によるED治療」という広告はその医薬品がドクターズオーダーによるものである場合はNGです。
※ガイドラインには「医師等による個人輸入により入手した医薬品又は医療機器を使用する場合には、仮に同一の成分や性能を有する医薬品等が承認されている場合であっても広告は認められない」としています(P27)。
②健康食品を用いて行う治療を広告することもできません(P35)。
ex.・フコイダンを用いたガン治療
(4)微妙なもの①:「・・・を用いて」をうたわない場合
ⅰ.3)において「・・・を用いて」とうたわない場合はどうなのでしょうか?
つまり、ドクターズオーダーのバイアグラを用いているが、単に「ED治療を行います」と広告したり、健康食品を用いているが、単に「ガン治療を行います」と広告することはどうでしょうか?
ⅱ.ガイドラインP35は、「未承認医薬品(海外の医薬品やいわゆる健康食品等)による治療の内容→治療の方法については、広告表示で認められた保険診療で可能なものや薬事法で承認された医薬品による治療等に限定されており、未承認医療よる治療は、広告可能な事項ではない」としており、未承認医薬品による治療は、その医薬品や健康食品に言及するワードがあろうがなかろうが、そもそも広告不可と扱うと読めます。
(5)微妙なもの②:医薬品や医療機器を用いない場合
ⅰ.では、何の医薬品や医療機器も用いない場合はどうでしょうか?
たとえばマッサージでED治療を行う場合です。
図にするとこうなります。
Bゾーンは4)の検討で不可ということでしたが、Cゾーンはどうでしょうか?
ⅱ.行政はおそらく「ガイドラインが定めているのはAだけだからBのみならずCも不可」という形式的解釈を採るでしょう。ただ、実質的に考えると、未承認品を用いているBゾーンは未承認の氾濫という弊害をもたらすおそれがあるので不可とするのも納得できますが、Cゾーンはそういう弊害がないのでこれが不可とされると納得できないものを感じます。但し、Cゾーンは「保険診療と同じことを違う目的で行う」に該当して広告可能となる場合もありえます。
2)-5.その他
ガイドラインは、①法令が国の事業による医療の給付を行っている旨②基準を満たす保険医療機関として届け出た旨 ③往診の実施 ④在宅医療の実施 を挙げていますが、ここは「大臣が定める」とはされていないので、他にも「提供される医療の内容」と言えれば可能です。たとえば、診療風景の写真は可能とされています(Q2-13)。
2)-6.美容
日本美容医療協会は独自に厚労省と協議し、美容医療に関してガイドラインを具体化しています。
ガイドラインはコチラ
2)-7.診療メニュー
診療メニューが広告可能か否かについては、医療機能情報提供制度において医療機能として使われているワードか否かも参考になります。
Ⅻ. 当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
(1)医療の提供の結果は厚労省が定めたものしか言えません
厚労省が定めたものは次の通りです。
ア 当該病院又は診療所で行われた手術の件数(ただし、前条各号に掲げる手術に係るものに限る。)
イ 当該病院又は診療所で行われた分娩の件数
ウ 患者の平均的な入院日数
エ 居宅等における医療の提供を受ける患者(以下「在宅患者」という。)、外来患者及び入院患者の数
オ 平均的な在宅患者、外来患者及び入院患者の数
カ 平均病床利用率
キ 治療結果に関する分析を行っている旨及び当該分析の結果を提供している旨
ク セカンドオピニオンの実績
ケ 患者満足度調査を実施している旨及び当該調査の結果を提供している旨
ⅩⅢ. その他前各号に掲げる事項に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項
1.その他として、厚労省は広告告示第4条で1号から17号まで定めていますが、本当に重要なのは「健康診査」と「保健指導又は健康相談の実施」です。
(2)健康診査
(3)保健指導又は健康相談の実施(ガイドラインP31)
a)「がんに関する健康相談」「生活習慣病に関する健康相談」「禁煙指導」等、対象者や指導対象を付記することも可
b)実施日時や実施する区分の氏名、費用等についても可
(4)広告ニーズの高い表現
広告ニーズの高い表現についてその可能性を検討してみます。
①体験談
話の内容が広告可能なものであったとしても不可とされています(P37)。
たとえば、「満足度調査も実施されていて良い病院だと思いました」というような体験談
⇒満足度調査を実施しているということは広告可能なことですが、その内容を語るのは不可となります。
②最高級表現・ベター表現
1.最高級表現
「日本一」「No.1」「最高」といったワードがNGであるのみならず、「肝臓がんの治療では日本有数の実績を有する病院です」もNGとされています(P36)。つまり、最高級表現がダメのみならず最高級類似表現もダメと考えられています。よって、「トップクラス」「代表的な」なども不可となるでしょう。
2.ベター表現
他よりベターという表現は許さないスタンスです。Q&Aは、「日本が誇る50病院の一覧」を引用することすらNGとしています(Q1-2)。
③タイアップ記事
1.記事は非広告なので広告規制はカバーしません
2.しかし、その枠代を医療機関が払っている場合は、その記事は広告に該当し広告規制がカバーします(Q1-5)。
④上下広告
上と下が分割されているから上が広告に該当しないと直ちになるわけではありません。上についても医療機関がお金を払っている場合は、上も広告扱いとなります(Q1-6)。
⑤診療風景
医療の内容に関する事項として可能(Q2-13)
⑥Before-After,After only, Before only
1. Before-After
治療の結果に該当するためNG(Q2-19)
2. After only, Before only
a)Q2-28は、「手術前のみ又は手術後のみの写真についても、治療の効果に関する表現ととらえられるため広告できません」としています。
b)ガイドラインは、病人が回復して元気になる姿のイラストも不可としています。
<変更前>
11)写真は術前ないし術後のどちらか一方であれば掲載可能であるが、術前・術後の比較写真は掲載不可。
<変更後>
11)写真は、治療効果が一定でないので、治療効果を暗示させるようなものは掲載不可。その意味からも術前・術後の比較 写真は掲載不可。
※ここは2010年7月にルールを変えています
⑦院長等のあいさつ文
あいさつの内容が、広告可能事項であるか医療とは直接関係がないものであれば、広告可能(Q1-3)
⑧おトク
a)安さの強調
今なら○○円は不可(ガイドラインp.37)。
他方、Q&Aの3-2は、「太字」「アンダーライン」はOKとしています。ガイドラインと合わせて考えると、「今なら」とか「たったの」のような、安さを修飾語で強調するのが不可と読めます。逆に、赤字や字が大きくなるのはOKでしょう。
b)無料
ex.)無料相談、無料カウンセリング、無料お試しコース
Q&A3-4は「無料で健康相談を実施している点についての広告は可能」としているので、①無料でやることはOKだし、②そのことを広告することもOKですが、③無料を強調するのは不可です。
c)プレゼント特典
ガイドラインに記述はないので一般法である景表法によって規制されます。来院者や受診者にもれなく何かをあげるのであれば「総付景品」という位置づけになり取引価格の2割までならOKです。
⑨安全性
①「医療の安全を保障します」、「絶対安全」、「比較的安全」は不可(P.23・35・37)
②安全を確保するための措置を広告するのは可。
ex.)安全管理のための指針を整備しています(P.23)
「安全を期するため、△△機器(一般名称)を導入しています」もOKでしょう。
⑩○○で紹介されました
雑誌や新聞で紹介された旨の記載は不可(ガイドラインP4)
⑪専門家の説話、芸能人・著名人の来院
a)専門家の説話の引用は不可(ガイドラインP5)
b)芸能人、著名人の来院は事実であっても不可(ガイドラインP34)
○まとめ17選
1.安さの強調はNG
NG例)無料キャンペーン実施中!しかも今なら⇒20万円OFF。
2.ベター表現NG
NG例)他の豊胸術とは違い・・・
3.治療結果の保証はNG
NG例)セレブ女優のようなグラマーなバストに!EDは治療で改善できる!
治せる!改善できる!虫歯をやっつける!
4.審美的表現NG
NG例)セクシーな胸元を演出→内部に脂肪を注入しボリュームを出します
NG例)アンチエイジング、審美歯科
5.比較表現NG
NG例)人気の、川崎で一番の
6.安全、無痛、NG
OK)安全に配慮、痛みが少ない治療、満足、納得
7.「数」表現の規制
例)来院数=P29(エ)暦月単位で併記
例)医師の手術数はNG → 院の手術数
8.優位性NG
例)最先端AGA治療
9.永久脱毛NG
10.無料診断(キャッチフレーズに使うなどの強調は不可)
11.専門医NG →担当医
12.医師のコメントはOK。
ただし、治療内容について。結果の保証はNG
13.治療費は、幅を示す
例)2500円~3500円
14.医師の略歴
例)研修医時代はNG、学会は役員クラスでないとNG
15.最新、最先端 → 新しい
16.認定医表示の規制
17.確立していない治療法NG
NG例)再生医療