歯科医療のビジネスは、どこまで領域を拡大できるのか?
1、歯科はどこまで医療行為ができるか?
薬事法ドットコム法務委員会(代表:松澤建司弁護士)は次のように考えています。
※前提
厚労省は平成8年に行った「歯科口腔外科に関する検討会」で歯科口腔外科の医療領域を次のようにまとめています。
標榜診療科としての歯科口腔外科の診療領域の対象は、原則として
口唇
- 頬粘膜
- 上下歯槽
- 硬口蓋
- 舌前3分の2
口腔底に
- 軟口蓋
- 顎骨(顎関節を含む)
- 唾液腺(耳下腺を除く)
を加える部位とする。
- 記から見ると、口腔外科を標榜している歯科医院であれば口唇は歯科領域
→ 口唇を厚くする注射は行える - 上記領域に対する施術でなくても上記領域の疾病に対する施術も可
→ 歯肉炎や歯周病などの歯科疾患に対する効果を期待してプラセンタ注射を行うのも可
2、刑事事件
1) 歯科助手の医療行為(産経新聞2016年1月15日)
歯科医師の免許を持たない助手に医療行為をさせたとして、警視庁生活環境課は歯科医師法違反容疑で、東京都品川区の「立会川駅前歯科クリニック」院長、佐々木和則容疑者(42)=港区芝浦=と歯科助手、前川泉容疑者(52)=大田区大森南=を逮捕した。
逮捕容疑は26年3月~27年5月にかけて16回にわたり、同クリニックで歯科医師免許を持たない前川容疑者に歯形取りなどの医療行為をさせたとしている。
佐々木容疑者は「違法と知らなかった」、前川容疑者は「小さな診療所ではどこでもやっている」と供述している。
佐々木容疑者は別会社の経営のためクリニックを不在にすることも多く、前川容疑者に多くの治療を任せていた。同クリニックでは21年からの6年間で1500人に対し違法な医療行為が行われていたとみられ、「歯の根幹が化膿(かのう)した」「顔が腫れた」と訴える患者もいたという。
2) ガン治療を行った歯科医を逮捕(脱税、暴力団絡み)
医師にしか認められていない医療行為を無資格で行ったとして、警視庁生活環境課は25日、東京都江東区有明3の診療所「東京有明メディカルクリニック(すでに廃院)」院長で歯科医の男(58)=東京府中市宮町=ら3人を医師法違反(無資格)容疑で逮捕したと発表しました。
クリニックは、事実上歯科医師しかいないのに、『遺伝子治療』などとし、内臓胃がんを抱える患者らを診療するなどの医療行為をしていた疑いが有るとして、警視庁が調査をしていたと云うことです。捜査関係者の話によりますと、元院長らは内臓にがんを抱える患者らに対して、通常では医師にしか認められていない点滴注射などの医療行為をした疑いが有るということです。
元院長らは、昨年11月の毎日新聞への取材に対して、『歯科医に認められている口腔がんの予防などを行っていただけ』等と話していたということです。
クリニックでは、元院長が経営するようになった2011年当初は、実際に医師を雇って診療を行っていたとのことですが、然し、14年初めまでに医師が相次いで辞め、その頃から実質的に歯科医の元院長だけが診療を行っていたと見られています。
『医師でない人が治療している』などの情報が江東保健所などに寄せられ、生活環境課が14年秋にクリニックを捜索していました。
14年初め以降は30代の男性医師が書類上、管理者となっていましたが、この医師は名義貸しだけでクリニックに出勤したことは一度もなかったということです。
医療法は、病院や診療所が常勤医師を管理者としておくことを義務付けており、生活環境課は同法違反容疑でも調べています。
元院長が理事長を務める医療法人『秀真会』は都内で、複数の歯科医院を展開しています。
秀真会を巡っては、脱税の疑いが有るとして東京地検特捜部が法人法違反容疑で捜査し、昨年11月末に元院長を在宅起訴していたのです。
他に逮捕したのは、暴力団山口計組幹部でNPO法人『先端医療支援機構』代表の男(42)と看護師の女(42)です。
インターネットなどで末期がん患者を集め、元院長が経営するクリニックで看護師の女が、未承認の薬を点滴注射していたということです。
逮捕容疑は2013年9月~14年3月にかけて、医師でないのに、30~60代の患者6人に計37回に渡って点滴注射などの医療行為をした疑いです。
同課などによりますと、3人はガン治療と称して約2500万円の収益を得ていました。
同課は、暴力団の資金源になっていた可能性があると見て調べているとのことです。