薬事法ドットコム社主、エグゼクティブ戦略顧問
の林田です(元政府委員・元弁護士)。
今日は続きのQ&Aです。
Q.認知機能のテストで、ビフォーとアフターで
同じ問題を使う場合、「慣れ」によってアフター
の値が高くなり得る。
その点をどうするか?という論点に関し、「サプ
リ群とプラセボ群、各々の変化量を比べればよ
い」という解決策があります。
しかし、ビフォーで点数の高い人ほどアフターの
パフォーマンスもよくなるのではないか、とい
う懸念があります。
この点の解決策はないのでしょうか?
A.1.ANCOVAを使う、という解決策があ
ります。
2.次のような例を考えてみます。
群 摂取前平均 12週後平均
サプリ群 72点 80点
プラセボ群 68点 74点
単純に摂取後だけを見ると、
80-74=6点
の差があります。
しかし、サプリ群はもともと摂取前から4点
高かったため、摂取後の6点差をそのままサ
プリメントの効果とは評価できないのではない
かという疑問があります。
変化量で見ると、
サプリ群:80-72=+8点
プラセボ群:74-68=+6点
なので、単純な変化量の差は、
8-6=2点
です。
3.ANCOVAでは、摂取前スコアと摂取後ス
コアの関係を全参加者のデータから推定し、両
群の摂取前スコアが同じだったと仮定した場合
の摂取後平均値を計算します。
(1)仮に、摂取前スコアが1点高い人は、
12週後スコアも平均して0.7点高い、という
関係が認められたとします。
サプリ群
サプリ群の摂取前平均は72点で、全体平均よ
り2点高いので、摂取後スコアから、
2点×0.7=1.4点を差し引きます。
80-1.4=78.6点
プラセボ群
プラセボ群の摂取前平均は68点で、全体平均
より2点低いので、摂取後スコアに、
2点×0.7=1.4点を加えます。
74+1.4=75.4点
したがって、ベースライン補正後の群間差は、
78.6-75.4=3.2点
となります。
実測の12週後平均 ANCOVAによる調整平均
サプリ群 80.0点 78.6点
プラセボ群 74.0点 75.4点
群間差 6.0点 3.2点
この例では、見かけ上は6点差でしたが、開
始時点の差を補正すると3.2点差になります。
(2)これで有意差検定を行うと次のようにな
ります。
サプリ群の調整平均:78.6点
プラセボ群の調整平均:75.4点
調整済み群間差:3.2点
95%信頼区間:0.8~5.6点
p=0.010
論文や報告書では次のように書きます。
「12週後の認知機能スコアについて、摂取前
スコアを共変量、介入群を固定効果とする
ANCOVAを実施した。
その結果、調整後平均値はサプリメント群
78.6点、プラセボ群75.4点であり、調整済み
群間差は3.2点であった(95%信頼区間0.8~
5.6、p=0.010)。
よって、摂取前スコアの差を考慮してもサプリ
群のほうが有意に高かった、と言える。」